水の話
 
水草の宝庫だった日本

はびこる帰化種 姿を消す在来種
 最近は水草の見られる場所が少なくなっています。水草の生育場所であった池や水路がなくなったり、コンクリートによる護岸改修のため、生育に適さない環境になってしまったからです。とくにため池は減少しています。それでも、郊外などに残っているため池に水草の姿をみることがあります。しかし、水草を見つけたといって喜んでばかりはいられません。日本にもともとあった水草がどんどん減り、帰化水草が増えているからです。

 帰化水草の中で、よく見かけるのがホテイアオイです。英語ではウォータヒヤシンスと呼び、青紫色の美しい花を咲かせます。明治時代に南アメリカから持ち込まれましたが、繁殖力が強いために河川や湖にはびこり、公害雑草として、駆除の対象にされました。しかし、繁殖力が強いということは水の汚れの元にもなっている栄養分を、たくさん吸収するということです。水質浄化に役立てようとの研究も行われています。

オオカナダモは熱帯魚店などで、アナカリスの名で売られています。これも汚れた水や低水温にも強いため、日本中の池や湖で繁殖しています。同じ種類のコカナダモも大繁殖するため、日本に昔からあったクロモの生育が脅かされています。ハゴロモモといえば、いかにも日本的な水草のようですが、これも帰化植物で、別名をフサジュンサイといい、熱帯魚店などではガボンバの名前で売られています。
ホテイアオイ
ホテイアオイ
繁殖力が強いため害草といわれたこともありますが、窒素、リンなどを吸収する働きが強いため、水質浄化に役立てる研究も行われています。

 黄色の美しい花を咲かせるキショウブも明治時代に園芸用として日本に入ってきた帰化植物です。西洋料理などの付け合わせとして知られているクレソンは日本名をオランダガラシと呼び、明治時代に生鮮野菜として日本にきたものです。帰化水草の中には水質浄化に役立つものもありますが、見方を変えれば汚れた水にも強いということです。水の汚れや池や河川の護岸改修によって、在来の水草が減少しているところへ、帰化水草が繁殖しているのです。しかも、帰化水草が人為的に持ち込まれて、在来の水草はますます減少しているのです。

維管束植物のうち水草が占める割合は1%程度です。では水草のもつ自然界での役割も小さいのかといえば、そんなことはありません。水質浄化に役立ったり、魚や鳥や水生昆虫のエサになったり、産卵場所、さらには彼等の生活の場そのものになっているのです。

主として明治時代以降になって人為的に外国からもたらされものを狭い意味での帰化植物と呼び、ここではホテイアオイ、キショウブ、フサジュンサイなどがそれに当たります。
(◎写真提供:浜島繁隆氏)
イヌタヌキモ ハス ホテイアオイの花 ヒツジグサ
イヌタヌキモ ハス ホテイアオイの花(◎) ヒツジグサ(◎)
ガマ ウキクサ各種 キショウブ ミズオオバコ
ガマ(◎) ウキクサ各種(◎) キショウブ(◎) ミズオオバコ(◎)
ムジナモ ヒルムシロ フサジュンサイ
ムジナモ(◎) ヒルムシロ フサジュンサイ(◎)

現在、絶滅の恐れがあるとされる水草は100種ほどにのぼります。これは在来の水草のうち、なんと4種に1種という数字です。
(◎写真提供:浜島繁隆氏)
ミズスギナ デンジソウ サンショウモ ミズニラ
ミズスギナ(◎) デンジソウ サンショウモ ミズニラ
アカウキクサ ガガブタ アサザ タコノアシ
アカウキクサ(◎) ガガブタ(◎) アサザ(◎) タコノアシ
スブタ ヤマトミクリ タチモ
スブタ ヤマトミクリ タチモ


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