水の話
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生物が水をきれいにする仕組み

濾過と分解をおこなう生物濾過
 たくさんの小石を入れた底のない器へ水を流せば、ゴミを取り除くことができます。これが濾過の原理です。小石の大きさを小さくすれば石同士の隙間が小さくなり、より細かなゴミを除去できるようになります。石の大きさが小さくなればなるほどより細かなゴミを除去できるようになりますが、透過する時間も長くなります。また水に溶けている汚れは除去できません。
生物濾過は細かな濾材の周囲に微生物を繁殖させることで濾過と有機物の分解の2つの働きを持たせた浄化方法です。濾材を小石に例えるならば、小石の周りをスポンジで包んだようなものです。干潟などでも、底生生物による濾過と微生物による分解作用があり生物濾過がおこなわれているといえますが、生物濾過という言葉には工学的に水を循環させるような時に使われるのが一般的です。つまり干潟では水が流れたり淀んだりする場所があり、自然の成り行きに任せて浄化がおこなわれるのに対し、生物濾過は強制的に水を循環させ、より効率的に水を浄化させています。
浄水場でも川などから取水した水を沈殿池で水に含まれる濁質(濁り)を沈殿させ、さらに、その上澄水を砂を入れた濾過池で濾過することにより、完全に濁質を取り除き、きれいな水(水道水)にします。
急速濾過は、沈殿の前処理として凝集剤を加え、沈殿池にて小さな濁質まで取り除くため、濾過速度を早くすることができます。
これに対し、緩速濾過は、薬品を使わず大きな沈殿池でゆっくりと沈殿させたのち濾過池で生物の力を借りて濾過するため、濾過速度が遅くなります。緩速濾過の場合、砂の表面付近に微生物の膜を生成させ、水中の有機物などの汚れを分解させる濾過を行っています。

担体流動部
生物濾過は、浄化槽にも利用されています。担体流動部では好気性微生物に、担体濾過部では嫌気性微生物により有機物の分解をさせます。

名古屋市上下水道局春日井浄水場
浄水場の濾過池には急速濾過と緩速濾過があります。ただ緩速濾過は広大な面積を必要とするため、最近は急速濾過が一般的になっています。(写真は名古屋市上下水道局春日井浄水場の急速濾過池)



川の流れのように
 浄化槽で使われる生物濾過にはいろいろな方式があります。例えば微生物の付着した濾材を槽の中で流動させると槽内の水は何度も濾材と接触するため、効率よく浄化されます。
自然の川は沈殿、濾過、分解を繰り返すことで水を浄化しています。浄化槽も川の流れのように、沈殿、濾過、分解をおこなっています。ただ、自然の浄化作用はゆったりとしています。ところが家庭排水のような人為的な汚れは自然の浄化作用の速度をはるかに超えて大量に流れ込みます。できる限りスピーディーに処理しなければ汚れた水が自然界を汚してしまいます。
かつて都市の中では土地の有効利用ということで、汚れた中小河川を埋め立てたり、暗渠化することが盛んにおこなわれました。埋め立てられずに残された川も、水源となっていた池がなくなり、湧水も減り、単なる排水路となってしまいました。汚れた水が溜れば悪臭やカ、ハエなどの発生源にもなってしまいます。衛生面からも川を埋めて下水道の整備をするのは一つの方法でした。
ところが都市から水辺空間がなくなることは自然がなくなることでした。川がなければホタルを呼び戻すこともできません。水がなければ川を復活させることができません。家庭で使われる水の量は1人1日で200~300Lとされています。大雑把にいえば浴槽1杯分の水に相当します。生活排水を下流の一カ所に集めて処理をすることは、比較的人口の少ない街であったとしても、浴槽にして何千杯あるいは何万杯分もの水を川から奪うということになるのです。
生活排水を未処理のまま河川に流せば水は確かに汚れます。しかし生活排水をきれいに処理してから、川へ戻してやれば、かつてのような川も生態系も復活します。長大な下水管の埋設にかかる費用や工期も大幅に短縮できます。川の再生ということからも生活排水は発生した場所からできる限り近くで処理をして戻すことが大切となっています。


川


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