水の話
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都市の排水

不思議な水の性質

 水は0℃以下になると凍り、100℃以上になると沸騰して気体になります。こうした変化はごく当たり前のことと思われています。ところが自然界の中で、常温でこうした変化をする物質はあまり見当たりません。
例えば溶けた臘(ろう)が冷えて固まると表面に凹みができて体積を減らすように、水以外の物質は液体のときよりも固体になったときの方が体積を減らすのが普通です。ところが水は液体のときよりも固体になったときに体積を増やします。水はH2Oと表記されるように水素化合物です。水素化合物の多くは0℃以下で沸騰して気体になりますが、水は常温では液体になっています。このように水は自然界の中で非常に特異な性質を持つ物質です。
汚れには水に溶けない汚れがあるといっても、厳密には水はどんなモノでも溶かし込みます。これも水の特異な性質の一つです。岩や砂さえも溶かし込みます。美味しい水の要件としてミネラル分の含有量が基準にされることがあります。これは地下に染み込んだ水がミネラルを溶かし込んでいるからです。鍾乳洞も長い時間をかけて水が石灰岩を溶かすことによってつくられます。
水は空気に触れれば二酸化炭素や窒素なども溶かし込みます。水素と酸素以外の不純物が含まれていない水を純水と呼んでいます。ところが水は何でも溶かし込んでしまうため100%の純水をつくることは不可能です。仮に100%の純水がつくられたとしても、器に入れれば、器の成分を溶かし込んでしまうのです。そのため、地球上には100%の純水は存在する事ができません。そのような水は理論純水と呼ばれています。ただし水は何でも溶かし込むとはいっても、年単位で溶かし込んでいく場合もあれば、瞬時に溶かし込む場合もあります。水に溶けるという場合は、極めて短時間で溶かし込む場合を指しています。あるいは水に溶ける汚れ、溶けない汚れとは、濾過や沈殿によって取り除くことができるかどうかで区別されることもあります。


谷川
厳密にいえば、水は何でも溶かし込みます。谷川の水が美味しいといわれる理由の一つは岩石などに含まれるミネラルを溶かし込んでいるからです。


溶けているように見える汚れ

 水の分子は一つひとつがバラバラに存在するのではなく、非常に短い時間で分子同士が引きつけ合って塊をつくったり、離れたりを繰り返しています。このときにつくられる水分子の塊をクラスターと呼びます。水に溶けたというのは、クラスターを形づくる水の分子の一部が水以外の分子と置き換わったり、クラスターとクラスターとの隙間に入り込んだりして拡散している状態を指しています。砂糖水は砂糖の分子が非常に細かくなって水の分子の周りにくっついている状態です。
ところが水に溶けてはいないのに、水に溶けているように見える状態があります。それをコロイド溶液といいます。牛乳や石鹸水はコロイド溶液です。コロイドというのは1000分の1mmから10万分の1mm程の大きさの微粒子が他の物質の中で均一に分散している状態です。豆腐や寒天などはコロイド溶液が固体になったもので、これをゲルと呼んでいます。コロイド溶液はそのままの状態で長時間放置しておいても沈殿することはありません。また普通の濾紙で濾過することもできません。
ただしコロイド溶液や砂糖水のような水に溶けている状態であっても、逆浸透膜によって水と水以外のものに分けることが可能です。浸透膜で仕切られた容器の中へそれぞれ濃度の異なる塩水あるいは砂糖水などを入れると、濃度を同じにしようとする力が働き、水分子が移動します。そこで濃度の高い方に圧力をかけると、水分子が逆の方向へ移動します。これが逆浸透です。通常の濾過は水に含まれる異物を、細かな網の目に引っ掛けて除去しますが、逆浸透は水分子だけを移動させます。動物や植物の細胞膜も同じ性質を持っています。水や海水の中に長時間入っていると手がふやけたりシワシワになるのも同じ原理です。


牛乳
1000分の1mmから10万分の1mmという非常に細かな粒子が水の中に均一に分散しているものをコロイド溶液といいます。牛乳もコロイド溶液です。


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