水の話
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生物が水をきれいにする仕組み

自然界での浄化作用
 金魚鉢の中で起きているような水の変化は自然界の中でも起きています。ヨシが生えているところや干潟などは水質浄化機能があるといわれています。川や池に流れ込んだ有機物は微生物によって分解されて無機物となり植物を育てます。ヨシは成長速度が早く、根は水中にあるので、たくさんの栄養分を吸収してくれるのです。ただし、ヨシもいずれは枯れてしまいます。そのまま放置しておけばやがて分解されて水を汚す元になってしまいます。自然界の中では有機物の分解と植物による吸収のバランスが保たれているため、水が汚れることはありませんが、水質浄化のためにヨシを植えた場合は、もともとの有機物の量が多いため、成長したヨシは刈り取ってやらなければ水質改善にはつながりません。
干潟の場合は二枚貝やゴカイといった底生生物が有機物をエサとして取り込みます。しかも干潟は川から流れ込んだ有機物が滞留しやすいため、栄養豊かな場所にもなっています。その栄養を底生生物が取り込み、さらに貝やゴカイはカニなどのエサとなり、カニは水鳥のエサになり、水域の外へ運び出されることになるのです。
自然界では干潟の生き物だけではなく、水の浄化に役立っている生き物がいます。海底にすんでいる海鞘(ほや)や岩場にすむ牡蠣(かき)なども水の浄化に役立っています。

川
川には陸地のさまざまな汚れ(有機物)が集まりますが、河原の生物、水中のプランクトンによって、消費(分解)されます。消費される量を上回る汚れが流入すると川は汚れます。

干潟
川によって運ばれて来た汚れ(有機物)が栄養分となり、さまざまな干潟の生物を育てます。



汚れた水にすむ生物こそ、浄化に役立つ
 水の汚れ具合の簡単の見分け方として、水域にどんな生物がすんでいるのかを調べる方法が使われます。あらかじめ水質ごとにすんでいる生物を選び出しておき、それを指標生物とします。環境省は魚、水生昆虫、貝類など30種類の指標生物を選んでいます。
一般に水がきれいなほど水中には多くの酸素が溶け込んでいます。しかし有機物などで水が汚れるに従い、有機物を分解するバクテリアが増えていくため、水中の酸素の量は少なくなっていきます。すると水中の酸素が少なくても生きられる生物が多くなってきます。こうした指標はあくまでも目安であり、ゲンジボタルのように清流にも汚れた水にもすむことができるものもいます。
エラミミズやセスジユスリカといった生物が大変汚れた水にもすめるのは生命力が強いということと、彼らのエサになるものが多いということです。彼らが水を汚しているのではなく、水が汚れたことによって彼らがすんでいるのです。逆の言い方をすれば、きれいな水には彼らのエサが乏しいため、生きられないということです。そのため、こうした生物を取り除いたとしても水がきれいになることはありません。むしろ汚れの元になる有機物をエサにするなどして水をきれいにするために役立っているのです。その典型が浄化槽の中にすむバクテリアです。


アメリカザリガニ
生物指標の水質階級では、外来種のアメリカザリガニがすんでいる水環境はランクIVの大変汚れた場所です(写真:墨田区環境保全課)

水質階級と指標生物


有機物を効率よく分解する浄化槽の微生物
 未処理の状態の家庭排水は大変に汚れているため、アメリカザリガニやサカマキガイすらすめない水質かもしれません。しかし、そうした水の中にもすんでいる微生物がいます。
浄化槽で汚れた水をきれいにするため、最初におこなわれるのが沈殿によって水に溶けない汚れや、まだ溶けていない汚れの除去です。次にバクテリアの有機物を分解する働きを利用した浄化がおこなわれます。バクテリアの動きを活発にするのは空気を送り込むことです。浄化槽の発展の歴史を見ると、最初は活性汚泥法が一般的でした。これは、汚れた水の中へ空気を送り込むだけの方法でした。酸素を補給されることにより、バクテリアは盛んに増殖し有機物を分解してフロック(塊)となり、水中を浮遊しました。増え過ぎたフロックは汚泥として定期的に除去していました。
バクテリアの動きをもっと効率的にしようと、次に考えられたのが生物膜法です。バクテリアが繁殖しやすいように、波状にするなどの工夫で表面積を大きくした濾材を水中へ設置し、空気を送り込みました。これにより、浄化槽の処理能力はさらに高まりました。一方、浄化槽はより小型化の方向へ向かっていました。小型化のために必要なことはさらなる浄化効率の向上です。そこで考えられたのが生物濾過でした。



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