水の話
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都市の排水
水面を光が泳ぎます。水中には魚の姿が見られます。川底には小さな丸い石ころや水草が見えます。叢(くさむら)の上をトンボが飛び交います。水のきれいな川にはさまざまな生き物が集まってきます。

水の汚れと川の汚れ

 都会の中を流れる川に空き缶やビニールなどのゴミが捨てられることはなくなり、最近は水が随分ときれいになっています。
水がきれいになった理由として川や池にゴミを捨てる人が少なくなったことがあげられます。しかしゴミを捨てなくなるというだけで、水はどこまできれいになるのでしょうか。
水の汚れといっても、さまざまな汚れがあります。ゴミが水面に浮いていたり、川底に沈んでいたりしている場合は、水が汚れているというよりは川が汚れているという言い方をします。水中にあるゴミのように簡単にすくいとったり拾い上げたりできる場合、必ずしも水そのものが汚れているわけではありません。
水の汚れには、比較的簡単に取り除くことのできる汚れと、簡単に取り除くことのできない汚れがあるのです。


川の汚れ
川の汚れにはゴミなどによる水に溶けない汚れと、有機物など水に溶ける汚れがあります。ゴミを除去するだけでも川はきれいになります。


水に溶けない汚れ

 水の汚れを大きく分けると、水に溶ける汚れと、溶けない汚れがあります。水の中にある空き缶やビニールなどのゴミは手で取り除くことができます。溶けない汚れは水の中にあるゴミのようなものです。ただし、溶けない汚れであっても、汚れの元が非常に細かいときは、手で拾い上げたり、たも網ですくいあげたりすることはできません。
例えば大雨が降った時に川が茶色く濁るのは川に流れ込んだ土砂が原因です。雨が止み、流れが穏やかになれば、水は徐々に元のきれいさを取り戻します。土砂が下流へと流れ去ったり、川底へ沈んだりして、時間の経過と共に水は澄んでいくのです。粒子が細かいために水が濁って見えているだけです。土砂で濁った水を透明なビンなどに入れておくと、底の方に石や砂が沈殿してきます。しかも沈殿物は層になって、下の方から比重の大きい小石、砂粒、そして層の上には細かな砂粒や粘土などが積もっています。
このような土砂による水の汚れは、水に溶けない汚れです。つまり水と混ざりあっているだけで、容易に分離することができる汚れです。水と分離させる方法として沈殿や濾過があります。取り除きたいものよりも目の細かなフィルターを通して分離するのが濾過です。沈殿させるには水よりも比重が大きいことが条件です。


土砂で濁った川
大水が出た後の川は土砂で濁っています。しかし時間の経過と共に、土砂が沈殿したり流れ去ったりして澄んだ水の元の川に戻ります。

水と土の分離
土をいれてかき混ぜた泥水を放置しておくと、水と土が分離して、濁った水が徐々に澄んできます。



水に溶ける汚れ

 最近の缶コーヒーは加糖、微糖、無糖など、糖分の量の多いものから少ないものまでたくさんの種類が販売されています。このうち糖分のたくさん入っているコーヒーから糖分だけを減らすことはできるのでしょうか。例えば缶コーヒーを何日間も静かに保管しておいても、糖分を沈殿させることはできません。あるいはコーヒーフィルターを通しても、糖分を減らすことはできません。つまりコーヒーに含まれている糖分は沈殿も濾過もできません。これは、糖分が液体の中に溶けているからです。しかも溶けているのは糖分だけではありません。コーヒーの色や成分そのものも溶け込んでいます。そのためフィルターを通しても、長時間保管しても、水とコーヒーを分離させることはできません。
水の汚れには、このように水に溶けている汚れがあります。ところが溶けるというのは、かなり誤解されそうな表現です。公衆トイレなどに、水に溶けないティッシュペーパーは使用しないでくださいといった注意書きがあります。ではトイレットペーパーは水に溶けるのでしょうか。トイレットペーパーを水に入れてよくかき混ぜると、形が崩れていき、最後は水が白く濁ります。ところがそのまま静かに放置しておくと、器の底に紙の繊維が沈殿し、白く濁っていた水は透明になってきます。つまり水に溶けるトイレットペーパーといっても細かく分解されるだけで水には溶けないのです。


コーヒードリッパー
コーヒーから抽出された成分は水に溶ける成分です。水に溶けるものは濾過や沈殿によって水と分離させることはできません。


水の中のトイレットペーパー
トイレットペーパーも水によって繊維が細かくちぎれ、一見すると水に溶けたように見えますが、時間が経つと沈殿し、水に溶けていないことが分かります。



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