水の話
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新しい川と人との関わり
ライフジャケットを着た子どもたちがタモ網を使い川底を浚(さら)います。川からは子どもたちの歓声が聞こえてきます。網の中には小さな魚や貝、昆虫がたくさん入っています。埼玉県が平成21年度から始めた「川ガキ養成埼玉塾」です。

川への愛着を育むことが里川づくりへの第一歩
 川は多様な生き物を育みます。かつて、大人たちは子どもの時に川を自然の教室として、さまざまなことを学びました。魚や貝の名前、泳ぎ方などは上級生が下級生へ教えました。大きな川で遊ぶ時には急に深くなっている場所、底で渦を巻いている場所など、近寄ってはいけない危険な場所も子どもたちの間で代々伝えられてきました。
ところが昭和40年代になり、日本中の川が汚れ出しました。治水の観点から、コンクリート護岸等の川が各地に作られていきました。川の生き物たちは急速に数も種類も減らしていきました。同時に水の事故を防ぐということで、安易に川へ近づけさせないような指導が行われました。そして川遊びの経験のない子どもたちが親になると、その子どもたちに川のことを教えられる人が少なくなりました。
汚れて生き物のいないことが当たり前になった川で育ったならば、川遊びの楽しさを知らないばかりか、川は汚れていているものと考えるようになっても不思議ではありません。川への愛着を深めるには、何よりも川とのふれあいが必要です。
東京湾へと注ぐ荒川を溯ると埼玉県に入ります。埼玉県寄居町を流れる荒川の中流域に、かわせみ河原と呼ばれる場所があります。川幅が広くなり、中洲も形成されています。ここは平成21年度から埼玉県が取り組んでいる川ガキ養成埼玉塾の会場の一つです。小学生を対象にして川遊びを通じて川とふれあい、川への知識と愛着を育てようという試みです。川の中の生き物を実際に捕って観察もします。もちろん川には楽しさと同時に危険な面もあります。万が一に川で流されたときの対処法や、保護者を対象とした救護法なども学びます。


川の生き物

タモ網で調べる子どもたち
埼玉県が行っている「川ガキ養成埼玉塾」でタモ網を使い、水の中にどんな生き物がいるのかを調べる子どもたち。


時代にあわせて変化する川の役割

 里川は、水や生き物の豊かさを育むことや、人と川との関わりを取り戻すことなどを目指しています。ただ時代の変化と共に、人と川との関わり方も大きく変化しています。動力源としての水車小屋はすでにありません。稲を山のように積んで運搬をする田舟を復活させることは不可能です。都市部を流れる川で洗濯や炊事の用意をすることなど想像すらできなくなっています。
時代と共に人と川との関わり方が変化していくのは仕方がないことです。里川づくりは昔のような人と川の関わり方を取り戻すことではなく、むしろ時代の変化にあった新しい人と川との関わり方を創り出すことです。
川ガキ養成埼玉塾のような取り組みは川を知らない子どもたちが川と付き合う最初のきっかけづくりです。


川と子ども
川は子どもにとっては自然について遊びながら学ぶことができる学校です。



川の再生4つのポイント

 埼玉県が取り組んでいる川の再生は、川を浄化するだけではありません。人との関わりを通して水や多くの生き物が育まれ、人々が失いかけているゆとりと安らぎの空間を新たに作り上げることです。さらに川の再生を通してまちづくりを行なうという、いわば川の復権でもあるのです。
これまでの川の再生といえば、ヘドロの浚渫(しゅんせつ)、護岸工事など、行政でなければ取り組むことが難しい施策が中心でした。それに対し、埼玉県では地域住民、NPO、企業、市町村などが連携し「清流の復活」と「安らぎと賑わいの空間創出」による川の再生を試みています。
さらに川の再生を進めるにあたり、4つのポイントを掲げています。
(1)自然や親水機能の保全・創出
・多自然川づくり
・親水機能を持った護岸や遊歩道の整備
(2)水辺の魅力創出・発信
・川を活用したイベントの開催
・地域イベントに併せた護岸の整備
(3)水環境の改善(水質・水量)
・水質浄化のための導水や家庭の生活排水対策
・河床に堆積したヘドロの浚渫
(4)川の浄化ムーブメント
・川の再生交流会や出前講座の開催
・水すましクラブや水辺のサポーターなど地域住民による活動
これら4つのポイントには住民が参加し、川を再生することを具体的にイメージできる内容が含まれています。そして県内100カ所を選定し、その中から5カ所をモデル地域として川の再生に取り組んでいます。


不老川
地域住民の人たちが長年にわたり河川浄化に取り組んできた結果、里川の姿を取り戻した埼玉県南西部を流れる不老川。



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