水の話
 
淡水と海水の境の生きものたち

ありふれていても、特殊なヨシ
 汽水域特有の水生植物というものはあまりないようです。つまり、植物は魚とは違い、塩分に対する耐性にそれほどの幅をもっていないということです。そんな中、宍道湖にも中海にも生えている植物がありました。ヨシです。ヨシは塩分のない川や湖のほとりはもちろん、25‰とかなり高塩分の場所でも生きられるのです。かなり特殊な植物といえるのかもしれません。このような植物はほかにはほとんどないため、ヨシだけの群落が作られやすくなってきます。

ヨシ 河口に生えるヨシ
汽水域は海水の影響を受け、普通の植物の生育には厳しい環境ですが、ヨシの群落だけはよく育ちます。

 河口域や海岸など塩分が含まれる土地に生える植物は塩生植物と呼ばれています。こうした場所も汽水域と呼べるとすれば、シバナも汽水域の植物といえるかも知れません。北海道から九州まで分布していますが、海岸の開発などでいまでは全国的に生育場所を減らし、将来が心配されています。

ウラギク シバナ 汽水域に作られた小規模な「干潟」状の場所に生える植物を「塩生植物」とよんでいます。シバナ(右)はかつてそうした環境に数多く見られた植物の一つですが、いまでは絶滅が危惧されています。ウラギク(左)も同じ様な環境で育つ植物です。(写真提供:須山知香氏)

 汽水域は塩分濃度など、環境変化の激しい場所です。しかも汽水湖の場合は富栄養湖となっているのが普通です。その意味では特殊な環境といえるでしょう。しかし人間が上手に付き合えば、豊かな水産資源をもたらしてくれる場所であり、水の浄化にも大変に役立つ場所なのです。


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