水の話
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美しい風景を創り出してきた自然のエネルギー

古くから発達してきた沿岸部の街
 駿河湾は沿岸部を黒潮の分流が流れ湾内の海水交換が行なわれ、陸から運ばれた汚れなどが長く停滞することはありません。しかも非常に深い水深をもつため駿河湾沿岸部は比較的汚れにくいとされています。実際、東京湾や伊勢湾、大阪湾といった閉鎖性の湾に比べ、湾全体としてはかなり良好な水質が保たれているようです。ただし沿岸部の港内は閉鎖的になるため、赤潮が発生することもあります。工場廃水や生活排水が水質に影響を与えているからです。
駿河湾沿岸の背後地は比較的平坦なところが多く、古くから人が住み、産業も発展してきました。東西の交通の要衝として重要な役割を担っています。また駿河湾の特産品であるサクラエビやシラスの好漁場が分布しているため、全国的な漁業の拠点として知られる焼津漁港をはじめ、11の漁港があります。
シラスの水揚げ日本一といわれる田子の浦港がある富士市は富士川によってできた扇状地に発達し、平成20年に富士川を挟んで位置する富士川町と合併した人口約26万人の都市です。古くから製紙業が発達し、平安時代に書かれた延喜式にも駿河の紙についての記述があり、鎌倉時代には幕府御用達の紙として駿河半紙の文字が記載されています。現在も富士市には製紙工場が全国一の70社あり、特にトイレットペーパーは全国の生産量の約33%を占めています。
富士市をはじめとした駿河湾の湾奥にある自治体の多くは豊かな地下水に恵まれています。富士市の場合、上水道の多くは富士山や愛鷹山を水源としています。水道水源の多くは深さ46mから268mまでの地下から汲み上げた水です。富士山や愛鷹山に降った雨や雪が長い年月をかけて浸透し、地下を通ってくる間に濾過され、適度なミネラルを溶かし込んで、おいしい水になっています。
これら富士山からの水の恩恵を受けている自治体の多くは地下水の涵養や揚水量を把握することによる適正利用などに取り組んでいます。その一方で工場廃水や生活排水による河川、湖沼、海域の汚染防止にも取り組んでいます。これらの汚染で大きな原因となっているのが未処理のまま放流される家庭からの雑排水です。
特に単独浄化槽はトイレ以外の雑排水を未処理のまま放流します。そこで下水道と同様な排水処理効果のある合併浄化槽への転換が各自治体によって進められています。こうして豊かな水資源を守りながら健全な水環境社会を目指しています。

漁港
駿河湾にはシラスやサクラエビなどの好漁場があり、漁港もたくさんあります。全国的にも漁業の拠点として知られています。

工場
駿河湾沿岸部は平坦な地形と富士山からの豊富な地下水に恵まれ、古くから製紙の街として発展してきた地域です。

水流
富士市をはじめとした駿河湾沿岸の多くの市は富士山や愛鷹山を水源とする豊富な地下水に恵まれています。そうした地下水が湧き出し、美しい流れをつくり出しています。


水環境と人を守る
 駿河湾の湾口の水深は2,500mにも達しています。海底の勾配もそれだけ急になっているということです。海岸から波の力などによって運ばれた砂は、他の海岸へ運ばれてあらたな砂浜をつくることなく深海へと運び込まれてしまいます。そこで国や県は海岸線を保全するためにさまざまな方策を行なってきました。
平成23年(2011年)3月に発生した東日本大震災以来、大地震や火山の大規模噴火などによる災害が懸念されています。日本各地でさまざまな異変が起きているといわれています。日本のどこで、いつ、どんな自然災害が起きても不思議ではないかもしれません。地球の長い歴史から見れば、東日本大震災のような大規模地震でさえ何度も繰り返されてきたはずです。
沿岸部には東名高速道路、東海道新幹線、国道1号、JR東海道本線が海に平行して走っています。津波や地震などで、これら大動脈に万が一のことがあれば日本は大混乱に陥ります。電気、水道などのインフラも大きな被害を受けてしまいます。この地域の人々の暮らしも大混乱をきたします。
地震や火山の噴火といった自然の営みを防ぐことはできないにしても、被害を最小限に食い止めることはできるはずです。そのための準備だけは日頃から心掛けておく必要があります。災害に強いインフラの整備は重要な課題です。災害時にどうやって水を確保するのかも大事なテーマです。
一方で被災地の排水処理も衛生面の確保から大きなテーマになっています。これまでの浄化槽は、美しい水を守るため、水環境の保全や再生をおこなうことが基本でした。しかし大きな災害時にライフラインの一つである排水処理の対策、衛生面、財政面など、これまでとは違う視点での水環境整備のあり方も見直されつつあります。

防波ブロック
砂浜の浸食を防ぐために防波ブロックが設置された海岸も見られます。

駿河湾沿岸
駿河湾沿岸には日本の大動脈となっているJR東海道本線、国道1号、さらには東名高速道路や東海道新幹線が走っています。



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