水の話
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富山湾の海洋深層水

海洋深層水の不思議

 海洋深層水は原水をそのまま利用する場合もあれば脱塩して利用する場合もあります。脱塩をしてもミネラル分が多く、硬度が1,000とか2,000となっているものがあります。こうした脱塩水は特にカルシウム分が多く、整腸作用に効果があります。さらに電気分解をした機能水にして利用する方法などがあります。
海洋深層水の添加でビール製造をすると発酵期間が30%ほど短縮されるため、海洋深層水を利用したビールも発売されています。富山でも海洋深層水を利用した地ビールがつくられ、ドイツの地ビールコンテストで銀賞を獲得するなどしています。
農業分野でもさまざまな形で活用されています。500~1,000倍に薄めた海洋深層水をリンゴやブドウの実に吹きかけると熟期が促進され甘みが増してきます。ほかにも野菜の増収にも効果があるとされています。もちろん魚介類の鮮度保持や魚市場の洗浄にも使われます。
一般には麦飯石の名前で呼ばれ、古くから漢方薬としても使われている石英閃緑(ひんりょく)ひん岩という原石があります。多孔質で水の浄化や臭いを取るとされています。ケイ酸が多く含まれ、また遠赤外線を出すなど、さまざまなことがいわれていますが、何らかの薬効があることは確かなようです。この石を微粉末にして石けんや化粧品の材料として使うとアトピーにもかなりの効果があるとされていますが、粉末にしただけでは材料となりません。そこで麦飯石の微粉末を海洋深層水でゲル化させ、材料として使用しています。
この他にも海洋深層水の微生物分野からの利用方法があります。海洋深層水の中にすむ微生物は多くはありませんが、これまでにない新しい乳酸菌も見つかっています。その乳酸菌でおからを発酵させると、おからに含まれているイソフラボンや花粉症予防にも有用な成分が吸収されやすい形になるとされています。このような新しい微生物が海洋深層水から発見される可能性はまだあるとされています。


熟期促進効果
希釈した海洋深層水をブドウなどの実に散布することで熟期促進効果が期待できます。左から散布しない状態、500倍と、1,000倍に希釈した海洋深層水を散布してからそれぞれ7日後の状態。(写真提供:富山県立大学・葭田研究室)


ビールや石けん
富山県立大学では海洋深層水を研究しているだけではなく、ビールや石けんをはじめさまざまな海洋深層水製品を開発しています。


地上の汚れた水こそが特別な水
 海洋深層水にはまだまだ未知な部分があるようです。海洋深層水を使用することでさまざまな効能が得られることは分かっていても、その理由となると、科学的に十分には解明されていないことも多いようです。
確かなことは谷川の清冽な水も、扇状地からこんこんと湧き出る水も、表層の海水も、そして海洋深層水も元は同じ水が循環しているということです。いずれの水も、決して特別で不思議な水などではなく、自然の水なのです。むしろ人の手によって汚された水こそが特別な水といえるのです。
海洋深層水は表層水と簡単に混ざり合うことはありません。そのため、表層水の影響はほとんど受けないとされています。しかしこのまま地球温暖化が進行していくと、いずれはウラジオストクの水温が上昇し、日本海固有水の流れが止まることも考えられます。そのような状況にならないようにすると同時に水を汚さないようにしていかなければなりません。


タラソピア
滑川市にある「タラソピア」は水深333mから取水した海洋深層水を使った健康とレジャーを兼ねた施設。窓からは富山湾の海も臨めます。


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