水の話
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富山湾の海洋深層水

低温性に特徴がある富山湾の海洋深層水
 富山県では富山県農林水産総合技術センター、入善町、滑川市の3カ所で海洋深層水を取水しています。入善町は沖合3,308m、水深384mから1日2,400tを、滑川市は沖合2,690m、水深333mから1日2,000tを取水しています。取水のための水深を300m以深にしているのは、対馬海流の影響を受けないからです。
取水施設で販売している海洋深層水には汲み上げたままの原水、脱塩水、あるいは濃縮した海洋深層水があります。脱塩水はミネラルウオーターのようなもので、そのまま飲用にしたりコーヒーなどを湧かしたりするのに適しています。富山湾の海洋深層水の性状を表層水と比較してみると、水温が2℃、一般生菌数が陰性、硝酸性窒素、全リン、溶性珪酸が特に多いことが分かります。これら3成分が多いといったことは海洋深層水全般についていえることです。この中で富山湾の海洋深層水としての大きな特徴は年間を通してほぼ2℃という低温性です。汲み上げる途中で表層水によって暖められますが、それでも取水口のところは4~5℃です。原水を使ってアワビの養殖などが行なわれていますが、アワビに適した水温は約16℃です。そこで取水した低温の原水を熱交換器によって、例えば炊飯工場の冷房に使い、熱交換した後の暖まった海洋深層水を養殖用の水槽に使用するといった2段活用が行なわれています。

入善海洋深層水と富山湾沖の表層海水の性状(平均)


ポンプ
脱塩装置
入善町の海洋深層水取水施設。ポンプ(上)で汲み上げられた海洋深層水はそのままの水と、脱塩装置(下)によって塩分を取り除いたり、濃縮した海洋深層水として供給されます。


養殖施設
アワビ
清浄性、富栄養性、低温性を生かし海洋深層水によるアワビの養殖なども行なわれています。(上写真提供:入善町)



海の中にいまも残る太古のスギ
 能登半島の付け根近くにある氷見(ひみ)海岸から立山連峰を眺めると、まるで海の上に3,000m級の山々が浮かんでいるようです。富山湾にはこれらの山々に源を発する小矢部川、庄川、神通川、常願寺川、黒部川などが注ぎ込んでいます。川は扇状地をつくり、豊富な地下水が形成されます。扇状地から湧き出る水は名水として親しまれています。富山県で降った雨や雪のうち、実に70%が地下に溜まり、数十年かけて地上に湧き出します。そのため入善町や砺波平野などでは多くの家庭がいまも井戸水を利用しています。
いまでは圃場整備によって水田に変わっている入善町の海岸沿いにはかつてたくさんのスギが生えていました。湧水のある沢地に生えるため沢スギと呼ばれていますが、現在では杉沢という場所1カ所だけに残されています。沢スギが生える沢地は小石が多く、栄養分が少ないため、根を地中深くに張ることができません。成長が遅く年輪が細かくなるので昔から建築用材に利用されてきました。切り倒されたスギの株から新しい芽が出ますが雪や自らの重みで枝が地面に着き、そこから新たな根を出します。こうして根元の方から何本もの幹を立ち上げた珍しいスギの姿となっています。
富山湾の水深20~45mの海底にもかつてはスギ林がありました。数千年以上前の富山湾の海面は現在よりもっと低い場所にありました。その海岸沿いに生えていたスギが海面上昇によって水中に没し、さらに長い年月の間に土砂に埋もれたもので、埋没林と呼ばれています。
なぜ、海底の砂の中に埋もれた杉の木が何千年もの間、腐ることなく現代まで残っていたのかといえば、地下水が扇状地の下を通り越し、海の中から湧き出す海底湧水のおかげです。富山湾といえども、夏場の表層水は30℃近くまで上昇します。ところが湧水の水温は年間を通してほぼ一定の14~15℃です。しかも地下水は海の表層水に比べ一般生菌数が少ないため、杉の木が保存されてきたのです。

沢スギ
杉沢の沢スギは豊富な湧水によって根元から何本もの幹が立ち上がっているのが特徴です。


スギの木
富山湾には数千年前に生えていたスギの木が埋まっています。扇状地の下を流れる豊富な地下水が海底のスギの木を腐らせることなく守ってきたのです。



クリームのように泡立つ海洋深層水
 おいしい水の条件とされているのが軟水です。水はさまざまな物を溶かし込みます。地上に降った雨は地下水や川の水となり土や岩石に含まれるさまざまなミネラルを溶かし込みます。溶け込んだミネラルの多い水が硬水、少ない水が軟水です。日本の水は軟水が多いのが特徴です。日本の河川水の平均値はマグネシウム1.9mg/L、カルシウム9.1mg/L、カリウム1.19mg/L(小林純・岡山大学名誉教授、1960年発表=高知新聞より)です。一方、海水はこうしたミネラル分が非常に多く含まれています。ただし表層水と海洋深層水とを比較しても、これらの成分にそれほど大きな差は見られません。
ところが海洋深層水と表層水は何かが違うようです。滑川市に海洋深層水を使いジャグジーや歩行浴などを楽しむことができる健康増進施設があります。バイブラバスの気泡は非常にきめ細かで、まるでクリーミーなビールの泡のようです。しかも瞬時に消えてしまいます。表層水をバイブラバスに使用しても、これほど細かな気泡はできません。海洋深層水の気泡が細かくなる理由は清浄性にあるのではないかと考えられています。また海水は真水よりも体が温まりやすいといわれていますが、海水の中でも海洋深層水の方がよく温まります。


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