水の話
 
湿地の生き物と人との関わり

下水処理水を打ち水などに利用
 都心部におけるヒートアイランドが問題となっています。エアコン、工場、自動車などから放出される熱が溜まり、気温を押し上げる現象です。気温が上がればエアコンの温度を下げようとするために排出される熱が増え、さらに気温が上昇していくという悪循環を繰り返してしまいます。これではエネルギーの無駄な使用につながります。そこで都心の温度を下げるために全国各地に広がっているのが「打ち水」です。道路や庭に散水することで気温を下げようというのです。もっとも、打ち水は昔から行われていました。未舗装の道路が多かったということもあり、砂ぼこりを防ぐということも目的になっていました。それを地域全体で一斉に行うことによって、気温を下げる効果をより高めようというものです。打ち水に使う水は風呂の残り湯、雨水、そして下水の処理水といった水です。こうした水の積極的な利用ならば省資源、省エネルギーにもつながります。
名古屋市が昨年夏に行った打ち水の結果では1度から2度の気温の低下が見られました。名古屋市は中心部にある堀留下水処理場の処理水を、さらに砂ろ過し、活性炭で臭気などを吸着した再生水を打ち水や公園の池の水として利用しています。見た目は上水道の水とほとんど変わりません。口に含んでも、若干、汚水の臭いがするかどうかの程度です。打ち水として使用するにはなんら問題はないようです。広範囲にわたり打ち水を実施すれば、かなりの効果が期待できるはずです。そこで今年は打ち水用の下水再生水を希望者には無料で提供しました。
また名古屋市西部に荒子川という小さな川が流れています。江戸時代にはすでにドブのような川であったようです。昭和になり宅地開発が進むとともに、水源は枯渇していきました。昭和50年、近くに下水処理場がつくられ、現在は処理水をさらに砂ろ過してアメニティー用水として荒子川へ放流し、せせらぎを回復しています。放流水量は1日約1万立方メートル、水質はBODが平均2.3mg/Lです。
再利用するために下水処理水を再処理した水を再生水と呼んでいます。再生水は利用目的に応じて国土交通省が水洗用水、散水用水、修景用水、親水用水の4つにわけて水質基準を設けています。基準項目として挙げられているのは大腸菌群、濁度、pH、外観、色度、臭気、残留塩素、施設基準です。
いま、下水処理水は全国で年間130億立方メートル発生しています。このうち約1.9億立方メートルが再生水として利用されています(平成13年度)。まだまだ有効な水資源としての使い道は残されています。
打ち水
名古屋市では7月から8月にかけて、市内各所で「打ち水」によって少しでも街を涼しくしようという試みが行われました。この時使用した水は、風呂の残り湯のほか、下水処理場で高度処理された再生水でした。

荒子川
名古屋市内を流れる荒子川の水源にも再生水が利用されています。

マンション
これまで水資源として使われてきた河川や地下水は、渇水や地盤沈下防止のための汲み上げ規制などによって不足しています。そこで新たな水源として生活雑排水を再生処理した中水道への関心が集まっています。中水道は空調用補給水やトイレ洗浄水として利用するので水資源の節約効果ばかりでなく、放流水の量も減り水環境の改善にも役立っています。

再生水から資源水へ
 これまで家庭で使われた水は処理して放流されていました。処理する理由は放流先の河川や海などを汚さないためでした。しかし、これからは自然を守るということに加え、処理水を積極的に利用することが求められています。それぞれの家庭や施設、地域などで使った水を、もっともっと雑用水としてトイレ、清掃、打ち水などに利用することができるようになれば、水の需要を大きく減らすことが可能となります。放流される水も少なくなるため、河川などの水環境の改善にも役立ちます。街の中から消えてしまったせせらぎを回復させることも可能です。こうなれば、浄化槽や下水処理場から放流される水は、たんなる処理水ではなく新しい水源と考えてもいいはずです。水は自然の中で常に循環しています。これまで水源地といえば、水がほとんど汚れていない山奥でした。一方、再生水、雑用水の水源地は都市の中です。これらの水を水源として有効に活用できれば、たんに汚れを取り除いた水というだけではなく、新たに使用されるための資源水として生まれ変わるのです。


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