水の話
 
湿地の生き物と人との関わり

進む雑用水の利用
 飲料水としてそのまま使える水道水を、日本のようにトイレの洗浄水に使っている国は世界でもあまり例がないといわれています。トイレだけでなく樹木への散水、冷却・冷房などに使用する場合は、下水や産業廃水を元にした再生水や雨水でもかまわないはずです。こうした水を雑用水と呼んでいます。上水道と下水道の中間という意味で中水道と呼ぶこともあります。平成14年度に雑用水を利用している施設は全国に2,790カ所あり、その使用量は1日あたり45万立方メートルに達しています。この量は全国の生活用水使用量の約1%に相当します。
かつて水は繰り返し使われていました。湧き水のある場所などでは流れに沿って炊事や飲料用、野菜などの食品を洗う場所、食器洗い場、洗濯場といった具合に使う順序を決めていました。風呂の残り湯は掃除に使い、さらに打ち水に使われていました。台所や風呂の水を庭先に溜め、畑の作物への水にしている農家もありました。
雨水も古くから利用されていました。江戸時代には民家の軒下などに雨水を溜める「天水桶」が置かれ消火用水や散水などに使われていました。離島などの水が少ない地域でも、民家の軒下に天水を溜める瓶を置き、炊事や洗濯などに使われていました。日本の雨水は年間ではかなりの量となります。東京都にあるすべての1戸建て住宅の屋根に降る雨水は都に水を供給している利根川水系の八木沢ダムの有効貯水量1億1,550万立方メートルよりも多い1億3,500万立方メートルになるといわれています。屋根に降った雨水はそのまま下水道などを通り川や海へ放流されています。そこでもっと積極的に雨水を利用しようと大きな屋根を持つドーム球場などに降った雨の利用が行われています。ドームに降った雨水を地下の貯水槽に貯え、ろ過、殺菌処理をしてトイレ洗浄水や植栽などへの散水として利用しています。
雨水はいわば天然の蒸留水です。1カ所へ集める工夫さえできれば有効に使うことができますが、天候に左右されるため安定的な供給は難しいのが現状です。一方、一度使用された水の場合、1カ所へ容易に集めることはできますが、そのままの状態での使用は畑や庭木への遣り水などかなり限定されてしまいます。家庭や事務所ビルなどで使われる水は膨大な量にのぼります。厳密な水質が要求されることの少ない工業用水の場合は、再生処理して使われてきましたが、家庭や事務所ビルからの生活用水は大半が使い捨てでした。そこでいま注目されているのが生活用水の再利用です。河川や地下水を水源とした従来のような水の供給システムに頼っているだけでは気象の変動などで水不足になる可能性があるからです。健全な水循環社会を目指すには再生水の積極的利用が重要となっています。
里山の風景
植木などに遣(や)る水に上水道の様なきれいさは必要ありません。台所で野菜などを洗った水、あるいは雨水で十分です。

里山の風景
地方へ行くと、畑や植木に遣(や)るための雨水を溜めている家を見かけることがあります。

ドーム
東京、大阪、名古屋、福岡などにあるドーム球場でもドームの屋根に降った雨水を貯えてトイレ洗浄水や散水などに利用しています。

サンシャインプラザ
福岡県福岡市早良区にある介護老人福祉施設サンシャインプラザは入所者とデイサービスに訪れる人たち約130人が使用するトイレ洗浄水を中水道で賄っています。施設内の生活雑排水を膜分離活性汚泥方式で再処理した再生水で、使用量は1日に約11立方メートルです。
東京都
東京都では「雑用水利用に係わる指導指針」を設け床面積30,000平方メートル以上、中水処理可能な原水量を100立方メートル以上の施設を中水道設置対象としています。霞が関にある中央合同庁舎2号館でも、トイレ洗浄水や植栽への散水に雨水と施設内で発生する生活排水を再生処理した水が使われています。

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