水の話
 
強い生命力を備えた植物

種類によって異なる生育環境
 コケ植物は蘚類、苔類、ツノゴケ類の3つのグループに分類されます。蘚類の代表ともいえるのが京都のお寺の庭などでよく見かけるスギゴケです。よく見ると、茎と葉がはっきりと別れています。園芸用として使われるコケの多くは蘚類です。
 苔類の代表といわれるのがゼニゴケです。茎と葉の区別がはっきりしているものもあれば、はっきりしていないものもあります。小さな水路の脇などで、鮮やかな緑色をした平な葉を、岩の上などにへばりつけるようにしている姿が見られます。
 ツノゴケ類には明確な茎がなく、植物体全体が葉のような形をして、春頃に胞子体をツノのように伸ばすため、このような名が付けられました。蘚類や苔類の種類はたくさんあるのに対し、ツノゴケ類の種類は多くはありません。
 コケ植物はこのように3つのグループに大別されますが、さらに細かくみていくと湿気を好むもの、どちらかといえば日の光を好むものや日陰を好むものなどに分かれます。地球上ならば海の中を除いたほとんどすべての場所で生育しています。南極のような植物の生育には適していないように思われる厳しい環境下であっても、コケ植物は生育しています。コケ植物に必要な条件は、基本的には日光と水分です。そのため、日の光が届かない洞窟の中ではコケ植物は育ちません。ただし、照明設備が備わった観光用の洞窟などでは、コケ植物が育つことがあります。

乾燥に意外と強いコケ植物
 コケ植物は水気の多い場所にしか生育できないと思われています。しかし、ミズゴケのように常に水のある場所でしか生きられないコケ植物もあれば、雨以外にはほとんど水が供給されないような場所に生えるコケ植物もあります。このようなコケ植物には水を体の中に蓄える特殊な構造があるのでしょうか。
 一般に、乾燥地帯に生える植物は葉に水分を貯えられるように、何十にも細胞が層をつくり、葉はかなりの厚みを持っています。普通の植物も葉の細胞は何層にも重なり、表面は水分の蒸発を防ぐロウ状のクチクラという物質で覆われているものもあります。ところが、歩道の敷石の間に見られるコケの葉を1枚だけ取り出し拡大してみると、細胞が1層しかないことが分かります。そのため、晴天の日が数日も続くと、コケ植物は水分を失ってしまいますが、完全に枯れてしまったわけではありません。かさかさに乾いたようなコケ植物に水をかけると、またたく間に元の姿に戻ります。
 コケ植物の中には体の中に水分を蓄える機能を持った種類もありますが、多くは群生することにより、1本1本の植物体が空気に触れる面積を少なくし、全体として湿度を保つようにしています。さらに、体から水分が失われると、光合成も呼吸も停止して眠りの状態になり、水分が与えられると再び活動を開始します。葉の先が丸まっているカモジゴケのように、葉の間に少しでも長時間水分を保持させるものや、スギゴケのように乾燥すると萎むことによって水分の蒸散を防ぐものなどがあります。
 コケ植物の細胞は非常に薄く水分が失われやすいため、逆に少ない水分が与えられるだけでもすぐに活動ができるようになっています。コケ植物は、水の利用が上手な植物です。
胞子体
つぼみのように見えるのは、花ではなく胞子をつくる器官・胞子体です。コケ植物の葉は水分がなくなると閉じてしまいますが、水をかけると、あっという間に開きます。

ゼニゴケ 庭に植えられるコケ植物はほとんどが蘚類です。苔類はあまり好まれません。左の写真は苔類の代表ともいえるゼニゴケです。
ハナゴケ
コケ植物に似ているのが地衣類です。地衣類には葉緑素がないため、緑色にはなりません。上の写真はハナゴケと呼ばれていますがコケ植物ではなく地衣類です。昔は板葺屋根の上などでもよく見られました。


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