フジクリーン工業株式会社
水の話
 
海と川がもたらしてくれる庶民の味

昔も今もアサリ採りで賑わう干潟の海
 アサリ漁としてもっとも多い漁法が、腰マンガを使った方法です。腰に箱メガネ、貝を入れる大きなタライ、マンガと呼ばれる柄の先に爪がついた鉄製の篭を付けて海の中へ入ります。マンガの柄を前後に揺すって篭を砂の中に潜らせます。篭を引き上げ海水中で揺すると、砂や小さな貝などは取り除かれ、編目以上の大きさの貝だけが残ります。腰マンガを使うのは、水深が腰までのところです。それより深いところでは舟の上から長柄マンガを使いアサリを採ります。
 ところで、漁師は当てずっぽうにマンガで海底を引いているわけではありません。アサリのいる場所を狙って漁を行っているのです。広い海の中でどうやってアサリがたくさんいる場所を見つけるのでしょうか。アサリは、大潮の干潮のときだけ陸化して、普段は海底となっている場所でよく育ちます。そうした場所まで舟で出かけ箱メガネで海底を覗きます。たくさんいる場所では、アサリの目(水管)がたくさん見られます。
 また、海底の砂地が硬いところではアサリのいる場所の周りの砂が軟らかくなり、逆に砂地が軟らかいとアサリのいる場所は硬くなっているため、足で海底を探っても分かるようです。こうして漁場を決めるのです。稚貝を保護するため、マンガの網目の大きさは決まっています。三河湾の場合は殻長2.5センチ以下のアサリは採ってはいけないことになっています。

バケツの中の貝 収穫後
マンガを引くと、アサリ以外にもバカガイ、サルボウ(アカガイの仲間)、トリガイなどいろんな貝が採れますがやはりアサリが一番たくさん収穫できます。中には、ノリのタネつけのために使われていたホタテの貝殻が一緒に入ってくることもあります。ときにはタコが獲れることさえあります。

腰マンガを使いアサリを採る漁師さん 腰マンガ
ふるい
腰マンガを使いアサリを採る漁師さん。このマンガのすき間は2.5センチ以上あります。他の貝を採るときも、一定のすき間のふるいにかけ、成長したものだけを採るようにして資源としての貝を守っています。

アサリを守る山や川
 アサリ採りといえば、やはり潮干狩りで見られるような、手掘りが一般的です。腰マンガが使われ出したのは40〜50年前からとされています。長柄マンガはさらに新しい漁法です。ということは、縄文時代の昔からアサリは干潮のときだけしか採ってこなかったのでしょうか。見方を変えれば、それだけで十分な収穫があったということです。かつて日本海側を除けば、干潟は海沿いであればたいていの場所にありました。現在、潮干狩りがほとんど行われていないのは、山形、秋田、新潟、富山、福井、京都、鳥取、島根、そして青森と兵庫の日本海側だけです。
 いま、アサリの漁獲高が減少しています。原因のひとつは埋め立てなどによる漁場の消失です。そして、海の汚れです。
 魚のエサとなったり産卵場所となる海藻が育つには適度な栄養分が必要です。窒素やリンはもちろん、様々なミネラル分も必要となってきます。それらを供給してきたのが川であり、その元を突き詰めれば山ということになってきます。つまり、山が様々な海の幸を育てているのです。しかし、生活排水などで汚れた水が、途中の川に多量に流れ込むと栄養分が増えすぎ、その結果海の汚れの原因にもなってきます。アサリは干潟で海水を浄化することによって、海の沖へ過剰な栄養が広がらないように調整する役目を持っていますが、アサリの能力を超えた量の栄養分が入り込むと海水は富栄養化し、プランクトンが異常増殖します。その結果、赤潮や苦潮による海域の貧酸素化が引き起こされてしまいます。当然、魚などはもちろん、アサリにとってもこのような海はすみにくい場所となってしまいます。
 何万年もの間、人々に豊かな海の幸を分け与え、しかも海を汚れから守ってきたアサリ。アサリがたくさん採れる海は、そこへ流れ込む川の流域に住む人々の自然を大切にする心の反映かもしれません。

砂浜

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