水の話
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瀬戸内海の再生

すべての人が恩恵を受けられる海
 豊かで美しい瀬戸内海をつくり出してきた要因として山や川があります。白砂青松の海岸の砂も、もともとは山から川の流れによって運ばれて来たものです。
生物の多様性というのは単に生きものの種類が多いというだけではありません。多様な生物が生きられる豊かな自然環境があるということです。水がどれだけきれいな海であったとしても、磯、岩礁、砂浜、干潟、藻場などがなければ生物がすむのに適した環境とはいえないのです。生物を育むためには栄養分も必要です。その栄養分も緑豊かな山から運ばれてきます。
海が豊かで美しいためには、山、川といった陸地も含めたバランスのとれた自然環境が必要となってきます。一方で長年にわたり人は漁業を通じて海を生産の場としても利用してきました。近年になるとレクリエーションの場として海を訪れる人も増えています。かつてのように、海は漁業や海運だけに利用されるのではなく、すべての人が海を何らかの形で利用し、楽しんでいます。昔のような美しい海を取り戻すと同時に、すべての人が恩恵を受けるような海として再生することが里海への取り組みです。


里海として再生するための課題
 瀬戸内海を再生するとはいっても多くの課題があります。瀬戸内法の施行によって瀬戸内海の埋め立てはある程度抑制されてきました。しかし埋め立てが完全になくなったわけではありません。
埋め立ての他に防波堤、桟橋、護岸などの設置や改修などの工事などがおこなわれています。こうした海岸の人工物を簡単に撤去することはできません。場合によっては新たな構造物をつくらなければならないこともあります。そこで構造物を新しく設置する場合や修復する時、船舶が接岸するために直立でなければならないような護岸を除き、できる限り傾斜護岸や石積みにするなどの工夫をしていくとしています。
あるいは使われないままになっている埋め立て地は浅場として復活することで失われた海辺の環境を取り戻すことも考えられています。また、貧酸素水塊が発生しやすい場所として海砂利を採取した跡があります。海底の砂地はヒラメやカレイといった低棲魚類が産卵したり、餌を獲る場所です。砂利が採取されると当然、漁業に悪影響を与えます。海砂利の採取を禁止し、そこに溜まった泥の除去や埋め戻しなどをおこなう必要がありますが、海砂利はこれまで土木や建築材料などさまざまな用途に使われてきました。採取を禁止するだけではなく、海砂利に代わる建材などの開発も必要になってきます。
さらに山、川、海を一体としてとらえ、山での植栽なども進めることが必要になってきます。ダムからの排砂も必要になってきます。このように海を再生させるには水質の改善だけではなくさまざまな対策が必要になってくるのです。

海岸
たくさんの島々が浮かび、美しい自然がそのまま残されているような瀬戸内海ですが、海岸線の中で自然海岸線が占める割合は36.7%しかありません。


甦るカブトガニ
 カブトガニは生きている化石として知られ、かつては瀬戸内海の多くの場所で生息していたとされます。岡山県笠岡湾はカブトガニ繁殖地としては日本で唯一の国の天然記念物に指定されています。カブトガニは砂地で産卵、孵化し、干潟で成長します。そのため砂浜と干潟が隣接しているような場所が必要です。
現在は陸続きとなっていますが、笠岡湾にある神島(こうのしま)は昭和41年(1965年)から干拓事業が実施されるまでは文字通りの島でした。干拓の結果、干潟は乾陸化し、笠岡湾は細長い閉鎖性の水域となりました。生活排水が流れ込み、水質が悪化し、カブトガニの数は急速に減少しました。そこで笠岡市は「カブトガニを守る下水道」と銘打って下水道整備事業を平成9年(1997年)から始めています。カブトガニ博物館でも、保護や増殖の研究や調査をおこない、少しずつですが成果をあげています。今後は瀬戸内海の干潟や砂浜が再生されていくことで、もっと多くのカブトガニが見られるようになるでしょう。

カブトガニ
まだまだ解明されていないことも多いカブトガニ。体長は50~60cm、寿命は25年くらいではないかと推測されています。(カブトガニ博物館にて)



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