水の話
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水環境をきれいにする取り組みの歴史

規制対象はCOD、窒素、リン

 総量規制を採り入れたとき、対象としたのはCODだけでした。リンは昭和54年(1979年)から、窒素は平成8年(1996年)から削減の指導がおこなわれるようになり、平成13年(2001年)から始まった第5次総量規制のときからCODと共に総量削減の対象となりました。川の汚れの指標としては一般にBODが使われますが、海域の汚れの場合はCODを使用します。
CODの規制強化は水質汚濁防止法の改正以来、これまで6次にわたり実施されました。そして第6次総量規制のとき、東京湾、伊勢湾、大阪湾はさらに水質を改善する必要性があるとしたのに対し、大阪湾を除いた瀬戸内海については現状の水質が悪化しないようにする、という方向性が打ち出されました。瀬戸内海はそれだけ水質の改善が進んだということです。平成22年(2011年)には平成26年度を目標年度とする第7次総量削減基本方針が策定されました。規制の対象となるのは1日の平均排水量が50m3以上ある、法律によって定められた指定地域内にある事業場です。
瀬戸内海に関係する地域から発生するCODは昭和54年度(1979年度)には1,012トン/日、窒素は666トン/日、リンは62.9トン/日でした。また平成16年度(2004年度)の汚濁負荷量のうち、生活系の割合は大阪湾ではCODの約70%、窒素とリンは約60%となっていますが、大阪湾を除いた瀬戸内海ではCODの約50%が産業系で、窒素は産業系と養殖漁業系で約38%、リンは産業系と養殖漁業系で約46%を占めて、生活系の割合は低くなっています。



海を巡る新たな問題

 総量規制の導入によって、瀬戸内海のCODはかなり削減されました。さらに窒素やリンも総量規制の対象項目に加えられ、昭和40年代には「瀕死の海」とまで呼ばれた瀬戸内海の水質は大きく改善されました。そして近年はほぼ横ばい状態が続いています。瀬戸内海の年間漁獲量がピークとなったのは昭和60年(1985年)頃だとされています。
漁獲高が減少している理由として、乱獲や気候変動による海水温の変化といったことも考えられますが、貧酸素水塊の発生などもあげられています。また現在、漁獲高の減少が顕著なものとしては貝類やナマコといった干潟や浅場にすむ底生生物があげられています。原因としては汚泥による底質の悪化、藻場・干潟の喪失、海洋等への廃棄物の不法投棄の顕在化、自然海岸の減少、海岸の浸食などが指摘されています。そしてこれまでの水質汚濁法や瀬戸内法だけではこれらの問題に十分な対応ができなくなっています。
藻場は昭和35年(1960年)から平成2年(1990年)までに7割、干潟も昭和24年(1949年)から平成18年(2006年)までに2割が消失しています。また日本の海岸線の中に占める自然海岸線の割合が52.6%であるのに対し、瀬戸内海の自然海岸線の割合は36.7%となっています。


海岸
何気なく捨てられたビニール袋やペットボトルなどが海岸に打ち寄せられると、ごみ捨て場のような場所ができてしまいます。


海の浄化能力を活かす

 海はもともと自ら浄化する能力を持っています。中でも干潟のもつ役割の重要性はよく知られています。またアマモやガラモといった海藻類が群落を形成している沿岸域の藻場は魚介類の産卵、成育場所となり、それらを餌とする生物が集まるなど、多様な生物の生息場所を提供しています。さらに水中の窒素やリンなども吸収しています。当然、光合成によって水中に酸素も供給しています。ところが、こうした水域が干拓、埋め立て、護岸工事などによって減少しています。
自然が持つ水質浄化能力の低下に加え、過去に堆積したヘドロによる酸素の消費がおこなわれ、貧酸素水塊がなかなか減少していません。そこで海が持っている浄化作用を活用し、生物多様性の観点や美しい瀬戸内海の観光資源なども含めた瀬戸内海の水環境のあり方が議論されています。水質の悪化を食い止めることで水環境の保全を図るといったことから、さらに海の再生による新しい水環境を創り出そうというのです。



須磨海岸
長さ1,800m、幅50~150mの白い砂浜が続く須磨海岸は毎年100万人以上の人が海水浴などに訪れる関西有数の海水浴場です。神戸市では2008年から「須磨海岸を守り育てる条例」を施行し、美しい海辺を守っています。


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