神話の森と日本一の清流

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清浄なる流れを守る人々

これからの水質管理のあり方

 平成24年度の勢田川のBOD値は6.1mg/ℓですが、日本で公害が大きな社会問題となっていた昭和40年代には、全国の一級河川の4分の1以上でBODの平均値が5.0mg/ℓを超え、水質改善が急がれていました。 さらに都市部を流れる川の中にはBOD値が50mg/ℓを越えるところも見られました。その後、排水規制や生活排水処理などの河川浄化事業により、BOD値が3.0mg/ℓ以下の地点は一級河川の全調査地点のうち94%にもなりました。
 水質の改善が進むと、多くの人が河川と身近に接する機会も増えてきます。それまでのBODのような水の汚れの指標だけでなく、様々な視点から水環境を考えるようになってきました。
 国土交通省では今後の河川水質管理の指標(案)を発表し、新しい水質指標による調査をおこなっています。新しい水質指標としてあげられている視点は「人と河川との豊かなふれあいの確保」「豊かな生態系の確保」「利用しやすい水質の確保「下流域や滞留水に影響の少ない水質の確保」の4つです。
「下流域や滞留水に影響の少ない水質の確保」は富栄養化を重視し、窒素やリンを指標項目として設定しています。これ以外の項目については、BOD値のみでの評価ではなく、快適性とか生物の生息・生育などをもとに3あるいは4ランクに分けてわかりやすく評価するという取り組みもおこなわれています。

左:勢田川をきれいな川にするために設けられた落差工。とおりゃん瀬は飛び石伝いに対岸へ渡れるようにしてあります。市民の川への関心を呼び戻す工夫です。
右:勢田川の水をきれいにするため、宮川のきれいな水を導水した水質改善の試みもおこなわれています。

ふたたび近づく人と川との距離

 川の汚れが深刻になってから、ゴミがなく、透き通った流れを取り戻すことは大きな課題でした。特にBODの改善は水質管理の一番の目標として捉えられてきました。ただ、窒素やリン、あるいは生物の生息環境にとってよくない化学物質などは、BODで評価ができません。
 人と川とのかかわり方も昔といまでは大きく変わっています。かつて、川はもっと人の暮らしの近くにありました。密接にかかわることで、生活を営むことができていたからです。ところが、技術の発達などによって人の暮らしが大きく変化し、川が貴重な資源である水を供給している場所だという意識は薄れていきました。人の都合によって、川と人は遠ざかり、水も汚れていったのです。
 川の大切さを訴えながら、地域の活性化に役立てようとする活動も見られます。宮川水系の川では、1市6町で構成されている宮川流域ルネッサンス協議会がかかわりながら、住民、企業、行政が一体となって、地域の歴史や文化、豊かな自然を保全、再生に取り組んでいます。勢田川でも地域の住民が中心になって川の駅や海の駅を整備して、昔の伊勢の風情ある町並みを楽しめるようにしています。人と川との距離を近づけることが豊かな自然と美しい流れの川の復活に繋がるのです。BODの改善は、そのための第一歩です。

遊覧船で伊勢市の歴史や文化を巡ることもできるように設けられた、勢田川河畔にある川の駅。人々の暮らしと密接にかかわることで、川は甦るのです。

評価レベル(人と河川の豊かなふれあいの確保)

ランク説明
A顔を川の水につけやすい
B川の中に入って遊びやすい
C川の中には入れないが、川に近づくことができる
D川の水に魅力がなく、川に近づきにくい

評価レベル(豊かな生態系の確保)

ランク説明
A生物の生息・生育・繁殖環境として非常に良好
B生物の生息・生育・繁殖環境として良好
C生物の生息・生育・繁殖環境として良好とは言えない
D生物が生息・生育・繁殖しにくい

評価レベル(利用しやすい水質の確保)

ランク説明
Aより利用しやすい
B利用しやすい
C利用するためには高度な処理が必要

河川水質管理の視点別の河川水質の確保すべき機能

河川水質管理の視点河川水質の確保すべき機能
人と河川との豊かな
ふれあいの確保
快適性水域全体がきれいであること
水がきれいであること
(水の透明感)
水の透明感があること
水の色がないこと
油、泡がないこと
川に入ったときの感覚がよいこと
(川に入ったときの快適性)
川底の感触が良いこと
水に触れた感覚が良いこと
臭いがないこと
安全性触れても安全であること
誤飲しても安全であること
豊かな生態系の
確保
生息
生育
繁殖
呼吸に支障がないこと
毒性がないこと
生物そのものが生息していること
利用しやすい
水質の確保
上水利用安全であること
(安全性)
有害物質を含まないこと
生物の毒性がないこと
おいしいこと
(快適性)
臭いがしないこと
おいしいこと
維持管理性浄水処理上の維持管理が容易であること
農業用水倒伏や生長阻害がないこと
工業用水スケールの発生等利用上の支障がないこと
水産用水水生生物の生息・生育・繁殖に支障がないこと
下流域や滞留水域に影響の少ない水質の確保 下流部の富栄養化や閉鎖性水域(ダム、湖沼、湾)の富栄養化への影響が
少ない水質レベルであること

資料:国土交通省河川局河川環境課 今後の河川水質管理の指標について(案)【改訂版】より要約

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