山村の活性化と排水処理

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財政を水処理から見直す村

収入が増えないのであれば支出を抑える

 職員の意識改革の次に、平成4年(1992年)からは住民の意識改革にも取り組みました。例えば道路の舗装や補修などは村がおこなうものだと多くの住民が考えていましたが、住民でできるような比較的安全な土木工事は、住民自らが汗をかいて取り組むことにしたのです。この事業は資材支給事業と呼ばれ「地域住民の生活環境の整備にあたり、村は資材を提供するだけで住民自らが施工する」というものです。
 村民がおこなえる範囲内、で受益者が3人以上の村道、農道、水路の整備や補修などの工事は住民自らがおこない、村はコンクリートや骨材、U字溝といった資材を提供します。重機が必要な場合は村が土木会社から借り、資格をもった住民が操縦します。その結果、道路などの整備がそれまでの経費の5分の1から6分の1でできるようになりました。

道路の簡単な舗装や補修工事は村民自らが汗をかき、そこで浮いた村の予算を有効に配分して活性化に役立てています。

村の予算は村民のために使う

 若者を増やすためにとった最初の政策は、若者定住促進住宅の建設でした。当初は国の補助金等を利用した住宅を建設しましたが、これから結婚をするか子どものいる若者に入居してもらおうと、平成9年(1997年)度からは補助金を使わず、村の予算だけの集合住宅建設に切り替えました。平成14年(2002年)度からは小学生の医療費を無料とし、現在は高校生にまで医療費の無料化を拡大しています。
 さらに村づくりは人づくり、という考え方に立ち、さまざまな教育改革もおこなっています。平成6年(1994年)には子どもたちにも利用し易いよう、中学校の横にお洒落な村立図書館を建設し、8万冊の図書を揃えました。図書館利用率は県下でもトップクラスを誇っています。平成8年(1996年)からは中学1年生のグアムへのホームステイを実施し、費用の半額を村が補助しています。
 平成19年(2007年)度からは保育料の引き下げや所得税非課税世帯の引き下げなどを数度に渡り実施したり、子育応援基金の創設、義務教育の給食費の補助、定住促進のため新増改築工事補助事業、さらに平成24年(2012年)度からは若者定住促進住宅の家賃引き下げがおこなわれています。
 ほかにも、子どもが成長した家族の広い住宅へのニーズに応えるため、分譲宅地の販売をはじめ、高速インターネットやCATVを誰でも利用できるように、全戸に対して光ケーブルの設置をしています。さらに若者だけではなく、高齢者の自己負担医療費の補助をするなど、村民が豊かで活き活きと暮らせるよう予算を配分しています。

村づくりは人づくりとの考えで、村は充実した図書館もつくりました。幼稚園児や小学校の児童数も増えています。

生活環境の整備で浄化槽を選択

 下條村に上水道が完成したのは平成2年(1990年)でした。加入率は99.5%で、総事業費は約30億円でした。上水道の完成する前年の平成元年(1989年)、下水道計画の検討が始まりました。当時の国や県は公共下水道か農業集落排水を積極的に推進しました。しかし当時の村議会が下水道ではなく合併浄化槽での整備を選択しました。
 汚水処理の性能面では下水道も合併浄化槽も基本的には変わりません。下水道ではなく、合併浄化槽の整備を決めた一番の理由は財政問題でした。下水道の建設費は上水道の1.5倍はかかるとされていたため、45億円位が必要だと試算されました。さらに管渠の敷設費用は山村であるがため1mで約10万円となり、建設費用に維持管理費を加えるとかなりの負担になります。
 下水道事業の場合、国から半分の補助が出ます。しかし半分は村で負担しなければなりません。そのための費用はいわゆる借入金で賄うことになりますが、金利を含めた毎年の返済額は1億5,000万円で30年間に渡り返済すると45億円です。結局は国から出る補助金と同じ額を村が負担することになってしまいます。さらに下水処理場などに係る人件費やメンテナンス費用が毎年発生します。
 最終的には平成2年(1990年)から23年(2011年)までに928基の合併浄化槽を設置し、8億7,000万円の費用となりました。このうち村の負担金は約2億5,000万円です。残りは県と国の補助金です。しかも単年度で処理ができます。ただし設置者には7人槽の場合で18万円を負担してもらいます。こうして現在は、村の汚水処理人口普及率は95%なっています。

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