水の話
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保存してうま味を引き出す塩と微生物

さまざまな発酵食品

 漬物の大半は発酵食品です。そして発酵食品には多くの種類があります。アルコール飲料は穀物、果物などを原料としてアルコール発酵させたものです。紅茶も茶葉を発酵させたものです。チーズやヨーグルトも発酵によってつくられた乳製品です。現在食べられているパンも大半が生地を発酵させてつくられています。調味料の味噌、醤油、味醂、酢などはいずれも発酵食品です。また鰹節も発酵させることでつくられます。寿司の起源をたどれば魚とご飯を一緒にして発酵させたなれ鮨です。
このように日本にも数多くの発酵食品がありますが、種類の豊富さからいえばやはり漬物です。漬け込む材料と、漬け込みに使用する材料の組み合わせによって名前も味も違う多様な漬物がつくられます。


鮒寿司
寿司の起源といわれるなれ鮨の一つである米と鮒を一緒に発酵させた鮒寿司。発酵によって米の形がほとんど失われています。(写真:Kida Yasuo)

ヨーグルト チーズ
発酵食品は世界中にあります。ヨーグルトやチーズは生のままでは腐りやすい牛や山羊の乳などを、乳酸菌や酵母菌で発酵させたものです。


漬物は酸っぱくてもアルカリ食品

 漬物は長期の保存に耐えられるだけではなく、自己分解、発酵などによって食材のうま味が増してきます。さらに漬け込みに使用する調味液や漬床の味が染み込むことで、一層おいしい食品へと変化します。
しかし、食品はおいしいだけではなく、体に良いことも大切です。人の血液や体液はアルカリ性のため、酸性食物ばかりを食べるのは健康上あまりいいとは言えません。アルカリ性食品とはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを含むもので、野菜や海藻、果物などに多く含まれています。一方、魚や肉、穀物には酸性のミネラルが多く含まれています。これらの栄養をバランスよく摂取することが大切ですが、野菜を生のままで大量に食べることはできません。煮たり炒めたりすればある程度の量を食べることはできますが熱を加えることでビタミン類が壊れてしまいます。しかし漬物にすることで、食べる量の割に多くの栄養を取り入れることができるようになります。
漬物は乳酸菌発酵によって酸っぱい味のものが多く、酸性食品のように思われがちです。ところがアルカリ食品か酸性食品かは味ではなく、含まれている成分によって決まります。しかも野菜を漬物にしても、ビタミン類が壊れることはありません。それどころか糠味噌(ぬかみそ)漬にすると米糠のビタミンB1やB2を取り込みます。同じ重量の生野菜と漬物の栄養を比較すれば、水分の少ない漬物の方が栄養価は高いことになります。こうして保存食としての意味合いの強かった漬物も、いまでは健康食として食べられることが多くなっています。


奈良漬け
「もろみ」を搾った液体が日本酒で、残った固体が酒粕です。その酒粕を利用してつくられるのが粕漬けです。一般には野菜を粕漬けにしたものは奈良漬けと呼ばれています。



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