水の話
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食品から水処理技術まで活躍する微生物
家の屋根も田畑も森も白銀で覆われる雪国。昔は冬に野菜が不足するため、漬物にして保存するのが当たり前でした。雪が降る前に、畑でとれたカブを洗う光景は、いまでも雪国の風物詩になっています。漬かったカブは表面だけではなく、中まできれいに赤く染まっています。

漬物の種類が増えたのは江戸時代
 漬物は食品の保存を目的にした塩漬けからはじまりましたが、やがて様々な味や香りを求めて漬け込みに使用する材料が登場し、醤油、味噌、酒粕、麹、酢などが使われるようになってきます。漬物の種類が増えたのは野菜の種類が増え、商業の発展した江戸時代だとされています。
江戸時代になると精米技術の進歩によって白米が食べられるようになってきます。同時に米糠を利用した漬物もつくられるようになりました。米糠と塩を練ってつくった糠味噌でつくる漬物の中で一番有名なのがたくあん漬です。名前の由来は江戸品川の寺の和尚、沢庵が考案したからであるとか、沢庵和尚の墓石が漬物石の形をしているためとか諸説あるようです。
糠味噌には耐塩性の乳酸菌が増殖しますが、撹拌をせずに放置しておくと嫌気性の乳酸菌が増えて悪臭を放つようになってしまいます。そこで毎日糠床をかき回して酸素を供給することで好気性の耐塩性乳酸菌が増え、嫌気性の乳酸菌の増殖が抑えられ、おいしいたくあん漬けが出来上がります。
たくあんは黄色をしていますが、これはダイコンに含まれている辛味成分が枯草(こそう)菌の働きで分解されてできた色です。ただし、最近はクチナシやウコンなどで着色するのが一般的になっています。

塩漬け
塩漬けにした野菜はきれいな色をしています。たくあんの黄色や赤カブの中の赤は乳酸菌の働きによるものです。


日本の調味料も発酵食品

 漬け込みに使用する材料として塩や糠味噌以外によく使われるものに、味噌、醤油、酢、味醂といった調味料や酒粕などがあり、いずれも発酵食品です。この中で発酵調味料として世界中で使われているのが酢です。酢は酒やワインなどが酢酸菌の働きで自然発酵すれば出来てしまいます。防腐成分の入っていない酒類であれば放置しておけば総て酢になってしまうため、世界で一番古い調味料だといわれています。
味噌と醤油の起源は同じで穀類を塩漬けにして発酵させたものでした。味噌ももともと保存食として食べられていたもので、調味料というよりはおかずのようなものでした。醤油の起源には諸説ありますが、鎌倉時代に中国から伝えられた金山寺味噌をつくる過程で樽から垂れてくる液体を溜りと呼んで調味料に使うようになったのがはじまりだともいわれています。現在では、ほとんど大豆だけでつくられているものを溜り、大豆と小麦がほぼ半々でつくられているものを醤油と呼んでいます。
味噌の原料は基本的に大豆です。ところが豆味噌とか米味噌、麦味噌などの種類があります。米味噌は味噌づくりの時に使う原料である麹に米麹を使ったもので、麦味噌は麦麹を使ったものという意味です。赤味噌とか白味噌といった違いは、その地域で普通に使われている味噌に比べて赤いか白いかという比較で分けられることもあるため、同じ信州味噌でも中京地区から見ると白味噌になり、関西地区から見ると赤味噌と表現されることがあります。米麹を多く使うと色が白っぽくなりますが、一般的な赤味噌と白味噌の一番大きな違いは原料となる大豆を蒸すか煮るかの違いだとされています。


酢
酢は世界で最も古い調味料の一つとされていますが、原料や製造方法はさまざまです。鹿児島県の黒酢は米、米麹、水だけを一つの壺に入れ、時間をかけて糖化、アルコール発酵、酢酸発酵を自然に行わせるという珍しい製造方法でつくられています。

味噌蔵
大豆を使った発酵食品の代表とも言える味噌。ここでは木の樽の中に入れ、天然石の重石を乗せて2年間かけて発酵させています。(岡崎市まるや八丁味噌の味噌蔵)



塩を使わず発酵させる納豆

 大豆を使った発酵食品として馴染み深いものに納豆があります。納豆といえばねばねばとした糸引き納豆を指すのが一般的ですが、糸を引かない納豆もあります。塩辛納豆とか寺納豆と呼ばれ、黒くて味噌のような塩辛い味がします。納豆の歴史からいくと、塩辛納豆の方が古くからあるともいわれています。
糸引き納豆も塩辛納豆のどちらも発酵食品ですが塩辛納豆は麹菌で、糸引き納豆は枯草菌の仲間である納豆菌で発酵させたものです。漬物、味噌、醤油などは塩を使うことで発酵を促しますが、糸引き納豆は塩を使わず稲藁に包んで一定の温度条件のもとで発酵させます。もっとも現在では稲藁を使わずに、純粋培養した納豆菌が使われています。
納豆は栄養価が高く消化にも優れているということで健康食品として人気があります。さらに最近では納豆特有のねばねば成分の凝集作用を利用して水質浄化にも使われています。


糸引き納豆
漬物などの発酵食品は塩を使うのが普通ですが、糸引き納豆は塩を使わず、茹でた大豆を枯草菌で発酵させます。



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