フジクリーン工業株式会社
水の話 藍染めpart1
藍―ジャパン・ブルー

 出藍の誉(しゅつらんのほまれ)、ということわざがあります。弟子が師よりまさるという意味です。この藍とは染料としての藍のことです。染液の茶色っぽい色からは、とても想像もできないほどの美しい藍色を染め上げます。
 明治8年、アトキンソンという英国人化学者が来日、多くの人が藍で染めた着物を身につけているのを見て「ジャパン・ブルー」と呼んで賞賛しました。しかし、明治の半ばに日本へも入ってきた化学染料によって、藍をはじめとした天然染料は急速に姿を消していきました。

世界に何種類もある藍色の原料植物
 藍染め製品が、根強い人気を保っています。もともと肌に直接着る作務衣、浴衣を中心とした春から夏の商品として都会でも売られ、さらに最近は藍の抗菌作用も注目されています。このほか、のれん、ハンドバック、サイフ、テーブルウエアといったものも出回っています。ただし藍色のものであっても、いまでは天然藍が使われているものは非常に少なく、化学染料の藍で染められているものの方が多くなっています。

 昔から若者に人気の高いブルー・ジーンズ。これも日本の藍と似たような色をしています。ブルー・ジーンズも藍も、同じインジゴという色素です。この色素の原料となる植物は、世界中にいろいろな種類があります。

 インジゴの語源になったものに、インド原産のマメ科の植物、インド藍があります。木藍とも呼ばれ、萩に似た植物で、英名はインジゴです。インドでは2000年以上前から染料として使われていたといわれます。

 インド藍と同じ仲間の植物に南蛮駒繋(なんばんこまつなぎ)があり、こちらはアメリカが原産です。ヨーロッパにはアブラナ科の大青(たいせい)が使われていました。日本では、沖縄の伝統的型染めである紅型(ひんがた)などに使われている琉球藍は、キツネノマゴ科の植物です。

 日本で藍という場合は、高さ70cmくらいのタデ科の1年生植物です。小さな子が「アカマンマ」といってママゴト遊びに使う、道端に生えているイヌタデと同じタデ科の植物です。これらの植物にインジカンという成分が含まれていますが、それが空気(酸素)によってインジゴという色素に変化し、青く発色するのです。藍は古くから世界中で使われている染料ですが、藍という名前の植物があるわけではありません。日本の藍も、植物の名前は蓼藍(たであい)です。

 ところが19世紀になって化学的にインジゴがつくられるようになると、天然の藍染は急速に姿を消していきました。

(資料:名古屋三越)

いまでは高価になっている藍染も、もとはといえば庶民の服を染めるものでした。日本の伝統的な染物として、最近はサイフ、テーブルウエアといったものにも使われています。


(資料:藍の館)

庶民の色として愛されてきた藍
 藍を使っての染色方法は大きく2通りがあります。一つは生葉を摺りつぶすなどして染料をつくり、そのまま使う方法です。しかし、この方法は藍の刈り入れ時期の夏しかできない上、染色堅ろう度もそれほど強くはありません。色も薄いブルーですが、いわゆる藍染とはまた違う美しさをもっています。
 現存する世界最古の染色布はエジプトで発見された4000年前の麻衣で、これも藍で染められていました。日本の伝統的な色を表現する言葉に縹色(はなだいろ)(花田色)があります。もともと鴨頭草(つきくさ)の花の汁で染めた色で、つき草とは色がつきやすい、という意味をもっていました。つき草は、いまでは露草と呼ばれる植物のことです。縹色は、藍の生葉で染めた色ともいわれています。
 やがて藍の葉を発酵させてつくるすくもの技術が日本に伝えられると、藍を使う藍染が一般化します。
 ところで蓼藍にも薬効があるといわれています。たとえば生葉の汁は毒虫に刺されたときの手当に効用があるとして外用されてきました。さらに藍で染めた布や紙は虫除けになったり蛇除けにもなるとして、昔は経典を染めたり野良着などにも使われてきました。最近も水虫やアトピー性皮膚炎にいいといって、くつ下や肌着を藍で染める人がいるそうです。アメリカでも、ブルージーンズは毒蛇を防ぐ効果があるといわれ、開拓時代の服装の代表にもなっています。


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