水の話
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窒素、リンの除去で守る水環境

生活のさまざまなところで使われているリン
 かつて琵琶湖の水質悪化で合成洗剤に含まれるリンが問題となったことがあります。リンの化合物であるリン酸ナトリウムや三リン酸ナトリウムは洗剤として利用できるため、家庭用の洗剤にリンの化合物が使われていました。リンは窒素とともに肥料の3要素の一つです。しかし閉鎖性水域などに大量の窒素やリンが流入すると富栄養化し、プランクトンや藻類が大量に発生します。その結果、主に海では赤潮、湖沼などではアオコの原因になってしまいます。赤潮やアオコが発生すると溶存酸素の不足や、大量発生したプランクトンが魚のエラに詰まるなどの窒息死、プランクトンがつくりだす毒素による斃死(へいし)など魚介類に大きな被害が出ます。さらに大量に死滅して水域の底に沈殿したプランクトンをバクテリアが分解するときに大量の酸素が消費され、貧酸素塊がつくられます。貧酸素塊で嫌気性バクテリアによってつくられた硫化水素が浮上して酸素に触れると硫黄酸化物になり、水面が青く見える青潮になります。
琵琶湖ではリンを規制するため、無リン洗剤の使用が呼びかけられました。また、リンを使用した洗剤の製造もおこわれなくなりました。しかしリンは現代社会においては重要な化学物質として日常生活の中でさまざまなものに使われているほか、生活排水、農業肥料、畜産の糞尿などにも含まれています。



窒素を除去してくれるバクテリア
 水環境の改善にはBODの除去だけではなく窒素の除去も重要だということは広く知られるようになってきました。生活排水から窒素を除去する装置も普及しはじめています。
浄化槽は空気を送り込んでばっ気がおこなわれています。これは酸素を送り込むことで好気性バクテリアの活動を活発化させるためです。これにより有機化合物が分解されてBODが除去されます。しかし好気性バクテリアによって有機化合物を分解しても窒素は除去できません。この段階では有機化合物に含まれている窒素はアンモニア態窒素の状態です。このままの状態で水環境へ放流することは、窒素肥料を流すようなものです。
窒素は硝化菌と脱窒菌の2種類のバクテリアの働きで除去されます。最初に硝化菌の働きでアンモニア態窒素を硝酸態窒素にします。次に脱窒菌のいる嫌気槽へ送り込みます。嫌気槽ではばっ気がおこなわれていないため、酸素が不足しています。脱窒菌は酸素が不足している場所で呼吸をする時に硝酸態窒素と結合している酸素を奪います。酸素を奪われた硝酸態窒素は窒素ガスとなり、大気中へ放出されます。



リンの除去がこれからの水環境改善のテーマ
 窒素の除去と同時にリンの除去も水質改善の大きなテーマとなっています。リンを除去する方法にはバクテリアを利用する方法や凝集剤を使って沈殿させる方法などがありますが、より効率的に除去できる方法として鉄電解法があります。
リンは生活排水の中ではリン酸という形で存在しています。そこで汚水の中にプラスの電極とマイナスの電極になる鉄板をいれて直流の電気を流します。するとプラス側の電極から鉄がイオンとなって溶け出し、水中のリンと結合しリン酸鉄がつくられ、汚泥と共に沈殿します。
河川や湖沼、あるいは東京湾や伊勢湾、大阪湾といった閉鎖性水域の汚れの原因となっているのは生活排水です。BODの除去によって一定の水質改善は見られましたが、なかなか改善が進んでいないのが現状です。
特にリンは生活排水に含まれるだけではありません。さまざまな分野で利用されています。しかも肥料の3要素との中でも特に重要な肥料としても使われるほか、家畜の糞尿にも含まれています。水環境の改善をさらに進めるには窒素とリンの除去がこれからの大きな課題となっています。

閉鎖性水域の水環境
閉鎖性水域の水環境を守るには生活排水に含まれている窒素やリンの流入を防ぐことが大切です。



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