水の話
メニュー1 2 3 4 5 6次のページ
 
植物の生長に必要なさまざまな元素

植物の灰を意味するカリウム

 肥料の3要素であるカリウムはカリとも呼ばれ、動物にとっては神経や筋肉の働きを正常に保たせる必須ミネラルの一つです。人の体には体重1kg当たり2gの割合で存在します。体内で採り過ぎた塩分の排除を促し、血圧を下げる働きをします。
元素記号はKで表される銀白色の金属の一種でナイフでも簡単に切ることができます。地球上にはたくさん存在していますが、他の物質とすぐに反応してしまうため、自然界では単体としてではなく、化合物としてしか存在していません。毒物として知られている青酸カリもカリウムの化合物で、正式にはシアン化カリウムといいます。
カリウムとは、もともとは植物を燃やしてできた灰を意味する言葉に由来しています。灰の成分はカリウムやカルシウム、マグネシウムなどの無機化合物です。生き物の体は大部分が有機化合物から構成されているため、燃やすと二酸化炭素や水蒸気となって大気中へ放出されます。しかし金属元素である無機化合物は燃やしても気体にはならず、固体として残るのです。灰は肥料以外にも植物のあく抜き、染色、焼物の釉薬など、昔から身近な化学物質として使われてきました。また、肥料として使われている硝酸カリウムは火薬の原料にもなっています。
海水の成分で一番多いのが塩化ナトリウムで、塩の成分のうち約78%を占めています。この他にも塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどのミネラルの他に、塩化カリウムも2.1%含まれています。カリウムを工業用として採取する場合は岩塩に含まれる塩化カリウムから精製します。
カリウムを肥料として利用する場合は塩化カリウムや硫酸カリウムの形で使われます。カリウムは主に根や茎の生長に必要な成分だとされ、さらに病気に対する抵抗性も高める働きがあります。


車
花火
化学物質としてカリウムの化合物は火薬の酸化剤、織物の染料、漂白剤として、リンも自動車の不凍液、繊維製品の難燃加工や以前は洗濯用洗剤にも使われていました。

カリ鉱石
カリ鉱石はもともと海や塩水湖のあった場所で形成されたものです。日本ではリン鉱石と同じく、ほぼ全量を輸入に頼っています。



3要素以外の植物にとって重要な要素

 植物に必要な栄養は窒素、リン酸、カリウム以外に水素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、イオウ、モリブデン、銅、亜鉛、マンガン、鉄、ホウ素、塩素の合計16の要素が必要とされていますが、酸素や水素、炭素は水や大気から得られます。
3要素と水素、炭素、酸素を除いた10要素のうち、どれが欠けても植物の生育によくない影響を与えます。例えばカルシウムは細胞分裂を促進します。不足すると細胞組織が弱くなり、ハクサイの芯腐れやトマトの尻腐れといった病気にかかり易くなります。マグネシウムは葉緑素の重要な成分で不足すると葉が落ち易くなります。またリン酸の吸収や運搬を助けます。
ニラやタマネギなどが放つ独特の香気、ダイコンやワサビの辛味にはイオウ成分が関係しています。イオウはタンパク質の合成にも重要な働きをして、不足すると葉が黄色くなったり、種子の出来も悪くなってしまいます。他の要素も不足をすると生育にさまざまな影響が現れます。
植物の生長に必要なものとして、水と3要素を除いた必須元素は自然界にも存在しているので、肥料として大量に与えることはありません。しかし、時には不足することがあります。そこで肥料としてではなく、活力剤の名前でアンプルに入ったものが売られています。
このように、植物の生育にはさまざまな栄養が必要とされますが、植物の生育のために与える肥料が水環境に悪い影響を与えていることがあります。



肥料の3要素と水稲の生育の比較調査
肥料の3要素と水稲の生育の比較調査。窒素、リン、カリウムのうち、いずれの成分が欠けても、植物は十分に生育することができません。(愛知県農業総合試験場にて)


メニュー1 2 3 4 5 6次のページ