水の話
 
清流の魅力を訪ねる
川面に反射する日差しがきらきらと輝きます。川の上に1本の橋が架かっています。しかし普通に見かける橋とはどこか雰囲気が違います。欄干がありません。観光遊覧船が橋の近くまで来て戻っていきました。沈下橋は四万十川を代表する風景の一つです。他にも四万十川の魅力を数え上げればきりがありません。

大きく美しい川の意味もある四万十川
川面 日本には清流と呼ばれる川がたくさんあります。しかし清流の多くは上流部に限られ、下流部までを通して清流と呼ばれる川は少ないようです。愛媛県との県境に近い高知県津野町不入山(いらずやま)(標高1,336m)に源を発する四万十川は全長196km、本流自体の長さとしては四国一を誇ります。四万十川が清流と呼ばれている理由の一つにダムがないことがあげられていますが、実際にはダムが存在します。河川法によるダムとは基礎地盤から堤頂までの高さが15m以上あるものとされています。四万十川本流には源流部から50kmほど下流に昭和12年につくられた佐賀取水堰と呼ばれる発電用の堰があります。この堰の高さは8mしかないため、ダムとは呼ばれないのです。しかし、地元の人たちはダムと呼んでいます。ダムがあるからといって四万十川の清流としての価値がなくなるわけではありません。
四万十川が全国に知られるようになったのは20年ほど前にテレビ番組で「日本最後の清流」として紹介されたのがきっかけでした。四万十川の正式な名称は渡川(わたりがわ)でしたが、四万十川という通称の方が有名になり、平成6年に四万十川が正式名称となりました。
四万十の由来にはいくつかあり、シ(大いに、又は大きく)、マムタ(美しい)がシマントになったというアイヌ語説、支流の一つ四万川と四万十町(旧十和村)の地名の十川を合わせて四万十川とした説や集めるという意味の十を付けた説などがありますが、いずれも決め手とはなっていないようです。

三里(みさと)沈下橋
四万十川の本流だけで沈下橋は21あります。この三里(みさと)沈下橋は河口から2つ目にあり、川漁師の船も見えます。



百種類以上の魚たち
 四万十川は自然の宝庫です。例えば魚類は150種以上いるといわれています。一つの水系にすむ魚の種類としては日本で一番多い川の一つとされています。ただし、これらの中には海にすむ魚もかなり含まれています。四万十川は河口から80km近くのところまでボラ、スズキ、シマイサキ、キチヌといった海の魚が確認されています。海の魚が川の中流域まで遡るのは、河川と海水の水温差が少なく、水量が豊富で流れが緩やかな上、春から初夏にかけて稚エビ、稚ガニ、アユやチチブの稚魚の遡上が盛んなため、それらをエサとして海の魚が追いかけてくるからです。
河口域の魚としては四万十川以外にも和歌山県南部の海岸から宮崎県の海岸にかけて生息しているアカメが有名です。大きいものは体長が2m近くに達するものもあります。一番の特徴は名前が示すように目が赤いことです。ただし、魚の目は自分から光ることはありません。光を受けて金色や赤色に輝いて見えるのです。
純粋な淡水魚としてはタモロコ、ヤリタナゴ、アカザなども生息していますが、カジカはここ数年姿が見られなくなっています。アマゴ、ウグイ、アユ、コイ、ウナギ、ゴリなどは川漁の対象となっています。魚以外ではモクズガニ(ツガニ)、テナガエビなども漁の対象となっています。漁の対象となる魚介類が多いということが、川の豊かさを雄弁に物語っています。そしていまも様々な漁法による漁が行われています。

シマヨシノボリ テナガエビ アマゴ アユ
シマヨシノボリ:中流域を中心に平瀬に多くすんでいます。雑食性で付着藻類や水生昆虫をエサにしています。 テナガエビ:空揚げにしたエビは、この地方の名物料理にもなっています。 アマゴ:サケ科の魚で海に下るものをサツキマスと呼びます。アマゴは上流域を代表する魚です。 アユ:全国の河川で養殖アユが増えている中で、四万十川には天然のアユもたくさんいます。
モツゴ(クチボソ) シマイサキ ドンコ カワムツ
モツゴ(クチボソ):環境の変化に強く、水が汚れても生息できます。雑食性で蚊の幼虫などもエサにします。 シマイサキ:主として沿岸域にすんでいますが淡水域の中流まで川をさかのぼることもあります。 ドンコ:昼間は岩陰や倒木の陰などに身を潜め、夜になるとえさを求めて活動します。 カワムツ:この地方ではアカバヤとも呼びます。上流域から中流域にかけて流れの緩やかな渕にすんでいます。
トビハゼ アカメ
アカメ:1984年に新種のスズキ目アカメ科として分類されました。幼魚の時は主に河口などの汽水域で生活します。成魚になっても餌にする淡水魚を追って河口に現れることがあります。地元では怪魚とも呼んでいます。
トビハゼ:干潟に生息します。1日の大半を皮膚呼吸をしながら水の外で過ごします。
アカメの幼魚
アカメの幼魚:幼魚のときは縞模様があります。成魚になっても緊張したり興奮すると薄い縞模様が出現することがあります。


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