水の話
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田んぼを通る排水路

下水道整備が困難な場所
 現在、全国の下水道普及率は約74%に達しています。この普及率というのは人口当たり何人が下水道を使用しているのかという割合です。74%というのは、100人のうち74人が下水道を使っていることを表します。下水道普及率は都市の規模によってかなり変わってきます。人口規模が大きくなればほぼ100%の普及率となっていますが、人口規模が小さくなれば普及率も下がってきます。とくに人口が5万人以下の中小の市町村の多くは普及率が45%以下となっています。
都市の規模別で下水道の普及率に違いのある理由はいろいろと考えられます。下水道を整備するには処理場まで管路を引かなければなりません。この管路の埋設に巨額の費用と工期が必要です。人口密度の高い都市であれば1本の排水管を多くの人が利用できますが人口密度の低い市町村では利用できる人の数が減り、一人当たりの建設コストが大幅に上昇します。
また大都市は平野部や盆地など比較的平坦な場所で発達しています。それに対し中小の市町村は、集落と集落とが離れているだけではなく、起伏のある地形になっていることもあります。時には集落から集落へ行くために、山を越えなければならない場合もあります。下水は自然流下させるのが普通です。高低差のある場所に配管をするだけでは、当然水を流すことはできません。そのため莫大な費用のかかる汚水処理場も、水系ごとに設置しなければならなくなってしまいます。こうしたことから中小都市での下水道の普及は大都市のようには進みません。

自然に近い状態の水質になった川
戸別排水処理施設整備事業によって、生活排水を処理してから放流することで、自然に近い状態の水質になった川。中小の河川にとっては家庭からの排水も新たな水資源になっています。

起伏の多い地形や集落と集落が離れている地域
下水道は自然の勾配を利用して処理場まで流します。そのため起伏の多い地形や集落と集落が離れている地域では処理施設をつくるのが容易ではありません。



厳しい財政の中で汚水処理人口普及率を上げる
 下水道普及率に対し、汚水処理人口普及率があります。これは下水処理人口に家庭用浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティープラントを加えた総人口に対する汚水処理人口の割合です。平成21年度の全国平均は85.7%となっていますが、人口5万人以下の中小市町村の普及率は71.0%で、下水道普及率の45%以下に比べるとかなり高くなっています。
農業集落排水施設やコミュニティープラントは集落ごとに排水処理をする設備です。そのため下水処理場まで長大な管路を埋設する必要がありません。浄化槽は個別に排水処理をおこなうため、処理水の放流先まではわずかな距離の排水管を埋設するだけです。処理水も下水道と同じ水質が得られます。こうした処理方法は工期が短く、工費もそれほどかからないということで、整備に力を入れる自治体が増えています。
さらに浄化槽は設備投資費用が下水道に比べ低額のため、投資した費用の回収にかかる期間が短いとされています。こうしたことも財政悪化に悩む自治体が浄化槽などの設置に積極的になっている理由です。


決め手は生活排水処理
 生態系保護の点からも、浄化槽は下水道に比べて評価されています。下水道は広範囲の家庭排水を集め、下流部でまとめて処理するため、水田からの落水のない時期に、排水路の水がなくなることがあります。一方、浄化槽などは戸別あるいは狭い範囲の中の生活排水を処理し、近くの川や排水路へ放流します。
排水路も生き物にとっては大切な生活空間です。排水路といえども水を必要とする生き物たちが集まります。排水路が汚れる一番の原因は未処理のままの生活雑排水によるものです。生活排水がきちんと処理されたならば、排水路の水質はかなり改善され、多くの生き物たちが戻ってくるはずです。

鳥
田んぼの中を流れる排水路も、生物にとっては貴重な水辺空間です。水がきれいになれば多くの水生動物が育ち、それをエサとする鳥たちもたくさん集まってくるようになります。


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