水の話
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田んぼを通る排水路

排水路を通って田んぼにやってくる魚たち
 川の流れには自然の浄化作用が働いています。そのなかで重要な役割を果たしているのが微生物による有機物の分解作用です。微生物は水の中で浮遊しているだけではなく、石や砂、水中の木などの表面をすみかとしているものもいます。水垢と呼ばれるものも微生物のすみかとなっています。
灌漑用水と排水路を比べれば、当然、灌漑用水の方がきれいです。ところが灌漑用水には水田で水が使われる半年間しか水が流れません。一方の排水路は水田で水が使われなくなっても、生活排水が流れ込むため、年間を通して水が流れます。魚や貝をはじめとした水中生物が年間を通して暮らすことのできるのは排水路ということになってきます。
田んぼは豊かな生態系を育んできた湿地の代わりとなって、生き物の生活の場を与えてきました。水の入った田んぼは栄養が豊富です。長年かかってつくられてきた稲作文化は、豊な生態系もつくりだしてきました。 
農薬の使用が少ない田んぼでは、タニシ、ドジョウ、メダカなどを見かけます。ホタルが田んぼの上を舞うことともあります。普段は陸上で生活をしているカエルも、田んぼに水が入る時期になると産卵に訪れます。大雨で川の水かさが増したときなどは、メダカのような小さな魚に避難場所として提供します。
水の中で生活をする生き物たちは田んぼに水がないときは川や水路で生活しています。田んぼに水が入れられると、水路を通ってやってきます。
ところが、灌漑用水の場合はポンプを使い田んぼへ水を入れるケースがよくあります。鳥のように直接田んぼへ訪れることができる生物にとってはそれほどの問題ではありませんが、魚は簡単に田んぼへ行くことができません。
それでも田んぼへやってくる生き物たちがいます。用水路が使えない田んぼへは排水路を通ってくるのです。田んぼと排水路とに落差があるところへ魚道を設けてやると、小さな魚が登ってくるのが観察できます。

排水路
排水路は用水路とは違い、田んぼからの落水がない時期は家庭排水が水源となり、しかも年間を通して水の流れがあります。生物にとっては貴重なすみかにもなる場所です。そこで生活排水をきれいに処理して流すのはもちろん、小さな中洲のようなものをつくり小魚などの住みやすい環境づくりに取り組んでいるところもあります。

水田魚道
用水路に比べれば、排水路の水の方が汚れています。しかし、年間を通して水が流れているのは排水路です。田んぼはメダカやドジョウなどの小魚が生活できる環境を与えてくれますが、用水路から田んぼへ入り込むための入り口がありません。そこで排水路から田んぼへ入り込めるように、水田魚道を設置するところが増えています。



排水路を汚す生活排水
 用水路も排水路も、完全に分離されているわけではりません。ため池や川の水は用水路を通して田んぼに引かれます。田んぼを潤した水は排水され、排水路を通して最終的には川へ放流され、下流で元の流れに合流します。水の中の生き物たちは季節になると産卵等のために上流へ向かいます。田んぼへの経路が排水路しかなければそこを通るしかありません。名前は排水路ですが、水が汚れていてもいいということではありません。
排水路の水をきれいにする方法はあるのです。汚れの一番の原因は家庭排水です。家庭で処理してから流せば、排水路の水はもっときれいにできるのです。
日本各地には生活雑排水が流れ込んでいたにもかかわらず、1960年代ころまではきれいな水をたたえ、魚たちの泳ぐ姿を見る事ができる川がたくさんありました。人口も水の使用量も少なかったため、流入する排水量が少なかったことに加え、生活排水の水質も現在に比べもっとよかったからでした。排水もきれいに処理すれば、多くの生き物たちのすみかになるのです。


汚れた川
生活雑排水を未処理のまま放流すると、かつてはきれいであった川も単なるドブ川になってしまいます。生活雑排水を処理することで、川は甦ります。


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