水の話
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ため池の生物多様性

池と海、池と池とを繋ぐ川

 ため池が持っていた本来の生態系を取り戻すため、最初に行うことは外来生物の駆除です。水面に浮かぶホテイアオイのような植物であれば駆除も比較的簡単に行えるかもしれませんが、外来の魚などの駆除は簡単ではありません。
効果的な駆除として昔ながらの池干しがあります。池から水を抜いてしまえば何がいるのかを容易に確認できる上、捕まえるのも簡単です。名古屋市ではこれまでに数回、市内にあるため池の池干しを行っています。2009年にはCOP10開催に向けて市街地にある隼人池で、地域住民と共に池干しを行い、生物調査と外来生物の駆除を実施しました。
この時、ブルーギル、オオクチバス、コイ、ライギョ(カムルチー)、ミシシッピアカミミガメ、ウシガエルなどを駆除し、モツゴ、タモロコ、メダカ、テナガエビ、スジエビ、イシガメ、そして海から遡上するモクズガニなどの在来種を確認しました。別のため池では外来生物を駆除した後、在来の水草や小魚が増殖していることが確認されているそうです。
池は必ずといっていいほど水源となる川と、流出する川や水路をもっています。外来生物しかいないと思われた池などで、その地域では絶滅したと思われていた在来種が見つかるのは、川を辿ってやってくるからです。ため池は川を通して最後は海に繋がります。川にはいくつもの支流が流れ込んでいます。そうした支流を通して、他の池とも繋がっています。外来種しかいないような池であっても、いつかは川を通して在来種が戻ってくる可能性があるのです。川は生き物にとって大切な回廊の役目をしているのです。



池干しによって復活する在来種の動植物
 名古屋市内にあるため池の一つで、COP10にあわせて池干しが行われました。名古屋市内にあるため池の多くが農業形態の変化とともに、本来の農業用水から雨水の調整池に変化していきました。池干しが行われたため池も40年程前に調整池となる前は、ほぼ毎年池干しが行われていました。
池干しを行う目的は堰の補修と底に溜まった土砂を取り除き、安全で十分な水を蓄えられるようにする事です。また、池底に溜まった土砂は畑の肥料にもなりました。さらに、フナやウナギなどを捕獲することもできました。しかも、池干しによって池の消毒にもなりました。池底が空気に触れることによって水を溜めた時に酸素が十分供給できるようになるのです。
水を抜いた池からは巨大なハクレン、コイ、ブルーギル、オオクチバスなどがたくさん捕獲されました。在来種のフナやモツゴの他にヨシノボリも見つかりました。外来種の魚は処分します。一方、池は水を抜いたままの状態で2~3カ月さらし、その間、在来種は近くにある別のため池の中に作った生簀で育て、元の池に水を張った後に戻します。
池の中は深いところでは腰の辺りまで、泥で埋まっています。本来であれば浚渫をするのですが、今回は浚渫は行わず、撹拌をします。泥の中で眠っていた何10年も前の水草の種が再び芽を出す可能性があるからです。

池干し1 池干し2
池干し3
農業用に使われていた頃のため池は2~3年毎に水を抜く池干しが行われ、結果的に生態系と水質が守られてきました。名古屋市内に残るため池で約40年振りに池干しが行われ、ブラックバス、ブルーギル、コイなどの駆除も行われました。


都市だからこそ守らなければならない自然
 農業用としての役割を終えたため池がどんどん数を減らしています。一方、ため池がもつ多様な生き物がすむ空間としての役割や、雨水調整といった新しい役割も見直されています。特に都市部では癒しの水辺空間としての重要性も増大してくるでしょう。
ため池から外来種を駆除することで、在来種が復活する可能性は十分にあるのです。池は川につながり、川は海に注いでいます。モクズガニのように海と池を往復する生き物もいます。そうした生き物が安心して暮らせる環境を取り戻してやることも大切です。そして池に流れ込む水は生き物たちが安心して暮らせるようなきれいな水であって欲しいものです。


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