水の話
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地域とともに水源を守る釜房湖

山の荒廃も汚濁の原因
 釜房湖の水質が他の指定湖沼の水質に比べ、特に劣っているというわけではありません。
フォルミディウムはそれほど珍しいプランクトンではなく、発生も釜房湖特有の現象ではないようですが、未解明な部分もたくさん残されています。
釜房湖の場合、ダム上流部の集落からの生活排水のほか、ダム周辺や上流部の山林が水質汚濁の面源にもなって、フォルミディウムが発生しています。
山林は緑のダムともいわれ、降った雨を蓄える働きをします。そればかりか、水を浄化する機能も備えています。つまり山林が水質汚濁の原因になることなどあり得ないように思われます。全くの自然の状態の山であれば落ち葉などが分解され有機物となって川に流れ込み汚濁原因にもなりますが、それは自然の生態系を保つ上では必要な「汚濁」です。ところが、日本の多くの山は戦後になって盛んに植林されました。植林された山は間伐を繰り返されながら、大きく立派な木を育てていくのです。木を立派に育てるには下草刈りなど、山の手入れが欠かせません。
山の手入れがなされずに放置されると下草がはびこり、せっかく植えた木が枯れてしまいます。枯れた木はやがて腐り、それが汚濁源となってしまうのです。雨も空気中の様々な成分を溶かし込んで汚れています。山が健全であれば雨の中に含まれている汚れを吸収してくれますが、痛んだ山林に降った雨は浄化されることなくそのまま河川に流れ込んでしまいます。
最近は気候変動によって従来では考えられなかった豪雨に見舞われることがあります。そのため、面源の汚濁物質が一気に河川へ流れ込むことも考えられます。さらに湖沼の水温も上昇傾向にあるようです。海水温度が0.4℃上昇するだけで海の生態系は大きく変化するといわれていますが、釜房湖の水温は1~2℃の上昇をしているのではないかと考える人もいます。

釜房ダム
釜房ダムは規模としてはそれほど大きなダムではありませんが、洪水調節、発電、農業用水、工業用水、水道水など多目的に使われています。


ダム湖
釜房湖は名取川水系の碁石川をせき止めてつくられたダム湖です。上流は宮城・山形県境で、標高1,353mの神室岳などを水源としています。(写真提供:釜房ダム管理所)


カワセミ カタクリの花 カモシカ
釜房湖の周辺には水辺の宝石と呼ばれている野鳥のカワセミや、カタクリ粉を取ることで知られるカタクリの花などを見ることができます。(写真提供:釜房ダム管理所) 釜房湖の周辺の自然は豊かで、道を歩いているとカモシカに出会うこともあります。


長期ビジョンによる水質保全

 面源は山林だけではありません。田畑、牧場、市街地など1カ所に特定できない排水も面源となります。湖沼法で指定されている湖沼の多くはこうした面源も汚濁源となっています。
平成16年に総務省が湖沼の水質保全についての行政評価を行ったところ、10の指定湖沼(平成19年指定の八郎湖は除く)の全てが環境基本法で定める環境基準が未達成でした。それまでの対策では水質改善が進まないということで、湖沼法の改正が行なわれました。従来の「水質保全計画」は計画年数が5年ごとでしたが、それを長期ビジョンを立てて取り組むようにすることになりました。さらに対策がほとんど立てられていなかった面源の対策も、地域を指定してつくることになりました。海域で行なわれていた総量規制を湖沼でも取り入れられることになったのです。また、従来は行政と学者が中心となってつくられていた水質保全計画に、何らかの形で住民の参加も求めることになったのです。


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