水の話
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都市の排水
水のないところで人は生活できません。使った水は汚れています。都市部でも、上水については様々な工夫がおこなわれてきましたが、使用した後の水処理については、それほど関心が高くはなかったようです。

そのままたれ流していた下水

 湧水をいまも生活用水として使用している地域があります。飲料用の水を汲む人、野菜や食器を洗う人、洗濯をする人などが訪れます。こうした湧水の使い方にはルールがあります。上流から飲料や炊事用、野菜や食器洗い、洗濯といった具合に使用目的によって、水を使う場所が決められています。使う人が少なければ、利用する場所を少し離すだけで、1本の流れを上水用と下水に使い分けることは可能です。
しかしたくさんの人が使用するようになると、飲料や炊事に使う水と洗い物などをした後に流す水は分けなければならなくなり、排水用の水路が必要になってきます。一般に、都市では排水路として下水道が使われています。
下水道は生活排水を高度に処理し、水環境を守る以外にも大切な役割をもっています。家庭などからの生活排水を流す分流式と、雨水も一緒に流す合流式と呼ばれるものがありますが、いずれの排水も最終処分場で処理され、川や海へ放流されます。合流式は都市部での集中豪雨の時に、雨水を排水することで浸水を防ぐという役割や雨水によって生活排水を薄める効果も期待できる半面、大雨のときには処理場に大量の水が一度に流れこむため、生活排水が十分に浄化されないまま放流されてしまいます。
ところで、地中に設けられた排水路を通して生活排水などを流す近代的な下水道が日本に登場したのは1868年(明治元年)のことで、神戸の外国人居留地に卵形をした断面のレンガづくりのトンネルがつくられたのが最初です。その後、大都市を中心に下水道が整備されていきますが、その多くは汚水を処理せずにそのまま海へ放流していました。
近代的下水道とはいっても、当初はそれまで地上にあった排水路を暗渠にしただけといってもいいものでした。ただし、排水路を暗渠にするだけでも、臭いを防ぎ、病原菌の飛散を防止することができるようになります。


暗渠
護岸の途中に開いた暗渠。普段は水が流れていませんが、雨のときなどに水が流れます。こうした暗渠は、かつて小川のあった場所と思われます。


中世ヨーロッパは道がそのまま排水路

 ヨーロッパの魅力の一つが古い街並と石畳です。石畳の中には道の中央部へ向かい緩やかな傾斜が付けられ、まん中にくぼみが付けられているものがあります。このくぼみは生活排水を流すためにつくられた溝だといわれています。
ベルサイユ宮殿にはトイレがなかったといわれます。当時、部屋として独立したトイレはほとんどなく、椅子の形をしたおまるがいろいろな場所に置いてありました。そしておまるに溜った排泄物は、庭などに捨てられました。
現代人にとって当たり前なものとして使われているトイレが宮殿にさえなかったのです。まして一般の都市住民の住まいにトイレなどはありませんでした。用を足す時に使われていたのがおまるです。おまるの中身を処理する方法としておこなわれたのが窓から道へ投げ捨てることでした。そのため汚物が石畳の中央に付けられた溝によって流れるようにしたのです。そんな状態であったため、都市部は極めて不衛生で、しばしばペストやコレラなどの流行に見舞われたといわれています。そこで17世紀頃から下水道がつくられるようになってきました。ただし当初は未処理のまま川や海へ直接流していただけです。


ヨーロッパの街並
昔ながらのヨーロッパの街並。水洗トイレもなく、部屋の中で「おまる」で用を足した後の汚物は、2階の窓などから道路へ投げ捨てられていたということです。

畑
1950年代までは畑の大切な肥料として使われていたし尿は商品としての価値を持ち、金肥とも呼ばれていました。都市の中のし尿も郊外の畑へ運ばれて使われたので、排水路へ流されることはありませんでした。


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