水の話
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生命力に優れた護岸の貝

カキのエサは植物プランクトン

 カキ養殖で最初に行なわれるのが採苗(さいびょう)です。6月頃から9月頃にかけてホタテの貝殻などを海中に吊るし、浮遊しているカキの幼生を付着させます。カキの幼生は養殖カキから生まれたものもあれば自然の状態から生まれたものもあります。
カキ養殖はエサを与えるということがありませんが、潮の干満の差を利用して空気中に稚貝をさらすことがあります。カキは潮間帯にも生息しています。空気中にさらされているときはエサとなる植物プランクトンを摂取することができません。そのことでかえってエサを盛んに摂取するようになるというのです。また、空気中にさらされることで弱いカキは淘汰され、強いカキだけが生き残ります。こうした空気中にさらすことを抑制といいます。
抑制を終えると育成です。カキのエサとなる植物プランクトンは一般に日の光の多い海面近くにたくさんいます。一方、海面近くは日の光によってカキ殻の表面にさまざまな生物が付着しやすくなります。水深が深くなれば付着生物は少なくなりますが、植物プランクトンは少なく水温も低くなり、カキの成長速度が遅くなります。ただし成長速度を抑えることが逆に生産調整にもつながります。こうしたことを考慮し、吊るす深さを調整しながら1年近く育てます。大きさが10cmくらいになるまで育ったところでホタテの貝殻から外して籠に入れ、さらに1カ月ほど海中で育てて出荷します。


ホタテの貝殻
平らなホタテの貝殻にカキを固着させる理由は、何段にも積み重ねることができ、生産の効率がよくなるからです。またホタテの貝殻のリサイクルということもあるようです。


カキは夏でも食べられる

 カキの収穫は9~10月頃から始まり、春頃まで行なわれます。夏のカキはあまり好んで食べられません。夏のカキは渋みがあり、あまりおいしくないとされているからです。また魚介類全体にいえることですが、生ものは保存の仕方によって食中毒にかかりやすいので、特に生で食べられることが多いカキは夏には避けられる傾向が強いようです。
ところで貝の食中毒の原因として貝毒、腸炎ビブリオ、大腸菌、ノロウイルスがあります。このうち貝毒はある種のプランクトンの発生によって引き起こされます。海域での検査がきちんと行なわれていれば、貝毒を持ったカキが出荷されることはありません。仮に貝毒の原因となるプランクトンが発生したとしても、カキの場合はそのまま海中に吊るしておけばプランクトンは数日でいなくなります。さらに、貝が取り込んだプランクトンも体外へ放出されるため毒はなくなります。
腸炎ビブリオは海中に普通にいる細菌ですが、水温が20℃を越すと増殖を始めるため5~9月頃までの海では増殖しやすくなります。この菌によって引き起こされる中毒はすべての魚介類に共通しています。大腸菌の場合は主に病原性大腸菌です。カキは大量の海水を摂取して植物プランクトンを濾しとってエサにします。そこで紫外線で殺菌した海水の中にカキを一昼夜入れておくことによって、カキ自身が体内の大腸菌を体外へ洗い流します。ノロウイルスも食中毒の原因となっていますが、加熱をすれば基本的には中毒症状を引き起こすことはありません。


海水
紫外線
紫外線で滅菌した海水に約一昼夜カキを付けておくと、食中毒の原因となるような菌を含んだ海水と滅菌した海水とが入れ替わり、無菌カキにすることができます。


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