水の話
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窒素、リンの除去で守る水環境
岩の間を清冽な水が流れています。水中の石の表面もきれいです。ところが田畑や牧場、村や町の間を抜けて下流へと行くに従い水は汚れてきます。水が汚れる原因はさまざまです。その一つに水に含まれている窒素やリンがあります。

化学肥料と有機肥料
 スーパーマーケットの青果物売り場で、有機栽培野菜という表示をよく見かけます。有機栽培野菜は味がいいとか、栄養価が高く健康にもいいといわれています。中には有機栽培にしたことで病害虫に強く、収穫量も増えたという農家もあります。しかし化学肥料がつくられるようになったのは19世紀の後半頃からで、それまでは有機肥料が当たり前でした。
植物は土壌の中にある窒素、リン酸、カリウムといった3要素をはじめとしたさまざまな元素を根から吸収して生長し、花を咲かせ、実をつけます。植物が枯れると、土壌の微生物によって植物体を構成している有機化合物が分解され、再び植物を育てる要素となります。また、自然界では落雷による草原や山林の火災による植物の灰や、洪水などによって上流から運ばれた土砂などが必要な養分として補給されます。こうして植物の生育に必要な栄養は自然の中で循環していました。
ところが栽培した野菜や果物は収穫物として畑の外へ運び出されます。つまり植物が土壌から吸収したさまざまな元素が持ち去られることになります。特に窒素、リン酸、カリウムは植物がたくさん吸収するばかりでなく、雨水などで溶出したり、土と強く結びつくなどして植物が根から吸収しにくくなったりします。こうしたことを繰り返していると、作物に必要な養分が足りなくなるため、栄養分を補給してやらなければなりません。そこで人々は昔から様々な形で植物の養分補給をおこなってきました。

畑
養分を吸収して成長した作物を収穫することは、その土地に含まれていた養分を他の場所に移動させることです。養分を与えなければ、やがて作物が育たなくなってきます。


最終的には無機化合物として利用される有機肥料

 有機肥料による栽培は、ほんの数10年前まで長年にわたりおこなわれてきた農業です。有機肥料は雑木林などから出る枯葉、家畜の糞尿、人糞、川や池を清掃したときに刈り取った水草、稲や麦を燃やした灰などを利用してつくられてきました。これらを畑に撒くことによって、作物として土壌から持ち去られた窒素、リン酸、カリウムなどを補給していました。
畑の肥料として昔から使われてきたものに、たい肥やきゅう肥があります。これは家畜の糞と植物などを混ぜてつくります。人糞も、畑の隅の壺に入れ、熟成させてから使われました。また、焼き畑農業もかつては日本中でおこなわれていました。
一方、産業の発展により人口が増加していくと、農地を拡大して食糧の増産をしなければならなくなりました。しかし限られた土地からさらに増産をするためには、同じ広さの農地からの収穫量を上げなければなりません。19世紀になると植物に必要な栄養が無機化合物であることが分かり、リン鉱石、カリ鉱石、大気中の窒素などを原料にした化学肥料がつくられるようになりました。
有機栽培野菜は化学肥料を使わない農法だとされていますが、有機化合物が直接植物に吸収されるわけではありません。有機化合物がバクテリアの働きによって分解されて無機化合物になることで利用できるのです。つまり化学肥料も、有機栽培に使われる肥料も最終的には無機化合物として植物に利用されるのです。
化学肥料の使用によって農業生産は大きく伸びました。畑に撒く肥料の量と、作物が吸収する量が同じであればそれほど問題はないはずです。
ただし、土壌に有機化合物の補給をせずに化学肥料を使い続けると、有機化合物をエサとするミミズのような小動物や有機化合物を分解する微生物が減少します。その結果、土壌の通気性や水はけが悪くなってきます。



燃やした藁や落ち葉などの灰
田畑で収穫を終えた後で燃やした藁や落ち葉などの灰も、重要な肥料となります。

有機物から作る肥料
有機物から作る肥料
家畜の糞尿、家庭の生ごみなど有機物から作る肥料がリサイクルの観点からも見直されています。環境にやさしいといわれていますが使い方がよくないと作物の生育や環境に悪い影響を与えてしまう場合もあります。




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