水の話
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海と山を繋ぐ生態系

瓦の代わりとなったカキ殻
 日本の家といえば瓦葺きが当たり前と思われています。しかし一般の家が瓦葺きになったのはそれほど古い時代のことではありません。農村部などでは半世紀ほど前まで、茅葺き屋根の方がむしろ当たり前の光景でした。
江戸時代には都市部といえども、上級武士、寺院、商家などを除くと、一般の町民の住まいで瓦葺きの家はそれほど多くはなかったようです。瓦ではなく、板葺き屋根の家の方が多かったのです。火事と喧嘩は江戸の花という言葉がありますが、江戸で火災が多かった理由の一つに板葺き屋根であったことが上げられます。そのため火災防止の観点から瓦の使用が奨励されました。しかし一般庶民にとって瓦は高級建材で、容易に使うことができません。そこで江戸時代の初め頃は板葺き屋根の上にカキ殻を敷き詰めるようにとのお触れが幕府から出されたこともありました。カキ殻はアサリなどの貝殻に比べて大きく厚みと重量があり、瓦の代用になったのです。また、屋根瓦の代用にできるくらい多くのカキ殻を集めやすかったのだともいえるのでしょう。


浄化槽の濾材にも使われたカキ殻
 海にいるときは水質浄化などで大切な役割を担っているカキですが、食用にした後で大量に出るカキ殻はどのように処理されているのでしょうか。現代では江戸時代のように屋根瓦の代用にされることもありません。
カキ殻はカルシウムの固まりのようなものです。養殖場などから出るカキ殻は塩分を取り除くため、約1年間野ざらしにされます。そのまま粉末にする事で、家禽(かきん)のエサにすることができます。他にもさまざまな形でカルシウムの原料として使われているようです。
カキ殻の表面は幾重もの層状になっています。そのため表面積が広くなります。微生物が有機物を分解する力を利用して水をきれいにする浄化槽では、多くの微生物が増殖できるように表面積が広くなる濾材が使われます。さらにカキ殻は表面積が広いだけでなく、pH調整機能が高く、水の汚れを吸着しやすい炭酸カルシウムが主成分です。そこで浄化槽の濾材としてカキ殻が使われた時代もありました。しかし水に溶けやすい炭酸カルシウムでできているカキ殻を長期間にわたり使い続けるとぼろぼろに砕けやすく、また扱いやすく耐久性に優れた再生樹脂を使った濾材が開発されたこともあって現在ではあまり使用されていません。ただ最近はカキ殻の水質浄化作用が見直されつつあり、カキ殻を砕いて粘土と混ぜて焼き固めたものなどで水質浄化実験を行なっているところもあるようです。
河川の改修工事で水の流れを止めるとき、カキ殻を詰めた網を土嚢と一緒に置くことで水の汚れを防止することもあります。この他、雨水が浸透しやすくなるようにアスファルト舗装のときなどにカキ殻を混ぜるといったことも行なわれているようです。

カキ殻


浄化槽
カキ殻が浄化槽の三次処理の濾材に使用されていたことがありましたが、今では扱いやすく耐久性に優れた濾材に換わっています。


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