水の話
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海洋深層水の秘密
白い航跡を残した漁船の姿が沖合に小さく浮かんでいます。その向こうに見える水平線のさらに彼方まで海は続いています。でも海の大きさは水平方向だけとは限りません。垂直方向へも広がっています。その海の底から汲み上げられる海水はさまざまな形で新しい資源として活用されています。

地球上で最も豊富な水資源

 湾を挟んで対岸に見える山は灰色に霞んでいます。頂は雲に覆われています。雲の下では盛んに雪が降っているのでしょうか。
冬の間に降った雪は春の訪れにとともに融け、川を下り、あるいは地下に蓄えられます。地下に蓄えられた水もやがて川を潤す源となり、様々な命を育みます。河川の水はそのままの状態で、あるいはろ過するだけで、暮らしや産業用として使える水です。しかし川の水はいつも同じ量が流れているわけではありません。季節や年によって流量にかなりの差があり、時には水不足に見舞われることもあります。雪が少なければ夏に旱魃(かんばつ)となる可能性が出てきます。 
一方、地球上に存在する水で最も多いのが海水で、全ての水の約97%にも及びます。どれだけ日照りが続いたとしても、池や川のように海が干上がることはありません。海水は地球上で最も豊富な水資源です。そんな海の水の利用に着目したフランスの物理学者、ダルソンバールは、1881年に深層の冷たい水と表層の暖かな水の温度差を利用した発電を考えたとされています。
日本で海洋深層水が注目され始めたのは1980年代で、高知県の室戸岬沖から汲み上げた海洋深層水の研究が始まりました。ほぼ同じ頃、富山県の海洋深層水の研究も始まりました。その後、日本各地で海洋深層水の取水と活用が行なわれるようになり、現在は民間や公的機関をあわせ、北海道から沖縄まで約20カ所の取水施設があります。


河川や湖沼の水が干上がること
降水量が少なく河川や湖沼の水が干上がることはあっても、海が干上がることはありません。


黒部川と富山湾
黒部川が富山湾へ供給する水でさえ地球全体から見ればわずかな量です。


光の届く限界が水深200m

 水深200m以深から汲み上げた海水は海洋深層水と呼ばれています。ただし、海洋科学の分野では水深200mまでは表層水、水深1,000mまでを中層水、それよりも深い場所の海水を深層水としています。
海の中で一番深い場所は太平洋のマリアナ海溝の10,924m、海全体の平均水深は約3,800mです。海洋深層水とはいっても、海全体から見るとそれほど深い場所の水ではありませんが、水深200m以深の水の量は全地球上の水の約90%にも及びます。しかもこの200mという違いが海表面の水とも河川や地下水などの淡水とも異なる特徴をもっています。
海面から差し込んだ光の届く限界が約200mです。そこから下は暗闇の広がる世界です。水中では10m深くなるごとに1cm2当たり1kgの圧力がかかります。水深200mになると1cm2当たり21kgというかなりの水圧がかかっています。グロテスクな姿をした深海魚がすむのも水深200m以深の水域です。さらに水温が低いということも一つの特徴です。


セッパリカジカ ザラビクニン
日本海の水深250~1,200mにすむセッパリカジカ(左)と水深200~800mにすむザラビクニン(右)。アマエビ漁や小形機船底引き網の漁で一緒に獲れることがありますが、一般に食用にはされません。

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