水の話
 
ビオトープが目指すもの

観察池とビオトープ
 ウサギや小鳥を飼ったり、花壇を作りたくさんの草花や野菜を植えたり、池を掘ってメダカ、ザリガニ、タニシ、コイ、アメンボウを放している学校があります。子供たちが動植物の世話をしたり観察をすることで、生物についての知識や命の大切さを学び、さらには情操教育にも役立っています。ビオトープもこうしたこととよく似ています。しかし、観察池や学校庭園とビオトープは違います。
観察池や学校庭園は、生物の観察や飼育に重点が置かれています。珍しい動植物をそこで育てることも生物の学習ということで意味をもってきます。ビオトープも生物の観察という面をもっていますが、さらに環境教育といった点や地域における野生生物の保護といった面も加わってきます。
岡崎市立秦梨小学校(愛知県)では、学校の裏山から湧き出す水を利用してビオトープ池を作っています。子供たちが、地域にすんでいる魚を捕まえて放しています。学校の周りは、都会からみればまだまだうらやましいくらいの「自然」が残されていますが、子供たちは、自分たちが住んでいる地域には、どんな生き物がいるのか、川のどんな場所に行けば、どういった生物がいるのかに、改めて関心をもつようになりました。水源となっている裏山の雑木林もビオトープです。ここには四季それぞれに様々な野鳥や虫たちが訪れます。野草も生えます。きれいに整地したり珍しい植物を植えるのではなく、地域の自然を大切にしています。

ビオトープの池 イトトンボ ビオトープとは、池を作ることではありません。水辺空間はあくまでもビオトープの-つの要素です。秦梨小学校では、校庭の片隅に作られたビオトープの池と裏山とを連動させています。池の中には、近くの川で捕まえたオイカワやサワガニがいます。アメンボウやイトトンボもやってきます。裏山ではシイタケも栽培しています。
アメンボウ
裏山 サワガニ
オイカワ

学校ビオトープは小さな生態系
 桜木小学校には、ビオトープの池の近くに木の枝や枯れ草、石などが積み上げられている場所があります。これは地域の野生の生き物を誘い込む仕掛けとなります。生き物は水辺だけを好むとは限りません。乾いた土地、草地、林、やせた砂地などそれぞれの環境があって生態系全体が作られるのです。使用していない時期のプールには、卵からかえったヤゴが成長しやすいように、ワラや木の枝を入れています。子供たちが歓声を上げて泳ぎ回るようになる前に、ここからたくさんのトンボが飛び立っていくのです。学校の池には、いろいろな鳥も訪れます。魚などを食べに来るのです。
池の中で発生したボウフラやプランクトンはメダカやトンボのエサとなっています。メダカの一部はヤゴに食べられ、ハエやトンボはツバメやカエルに食べられます。こうして生き物たちはバランスを保ちながら、少しずつですが増えています。ここでも小さいながら、立派な生態系が形づくられているのです。学校の近くに佐奈川という小さな川が流れています。地域の人たちとともに、この川のクリーン作戦にも取り組んでいます。子供たちは川に投げ捨てられたゴミを拾うと同時に、川の中にどんな生物が生きているのかといったことも学び取ります。この川そのものもビオトープなのです。川がきれいになれば、ホタルも数を増やしていくことでしょう。小学校と地域を流れる川とが結び付き、さらに大きな生態系へと発展しつつあるようです。
愛知県碧南市に油ヶ淵という大きな池があります。水質汚濁はかなり進んでいます。池から流れ出す川のひとつに高浜川があり、その川のほとりに碧南工業高校があります。この学校では、川の水をソーラー発電システムを利用したポンプで汲み上げ、きれいにして学校ビオトープに利用しています。高浜川の水は塩分を含んでいるため、逆浸透で塩分を取り除き生物処理をして、水質をBOD10mg/lから2mg/lにまで浄化しています。浄化した水は校庭の一画に作られた小川に流しています。小川ではメダカなどが泳いでいます。さらに、地域にたくさんいるサカマキガイをエサにしてヘイケボタルの幼虫を飼育し、油ヶ淵や地元の小中学校などで放流しています。


ソーラーパネル 水質浄化システム
碧南工業高校では、学校の横を流れる川の水を使い、ビオトープに利用しています。屋根にソーラーパネルの取り付けられた小屋の中には水を汲み上げるポンプや水質浄化システムがあり、小屋の周りに作られた小川に流しています。小さな田んぼも作られています。


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