水の話
 
季節を失くした野菜や果物

自然の土と太陽光は生育の絶対条件か?
 植物の生育にとって重要な働きをもつものとして、土と光が考えられます。土は植物が根を張り体を支えるために必要なばかりか、その根から成長に必要な水や養分を吸収して蓄えています。根が呼吸するための空気も、土の中に蓄えられています。また、気象による温度変化に対しても、土の中は外気温ほどには変化をしません。
もしも土がなければ、植物は根を張り、水や養分を吸収して成長することができなくなってしまうのでしょうか。また、光が当たらなければ、植物は光合成ができなくなりますが、この場合の光も太陽の光でなければならないのでしょうか。
植物の生育にとって必要な養分は土の中に含まれています。土の元になっているのは岩石です。それが長年雨風や熱などによって破壊されて小さな石となります。さらに細かく砕かれ、朽ちた植物などの有機物が混ざり合ってできたものが土なのです。生物のいない月などに土はありません。植物にとって必要なものは土そのものではなく、あくまでも土の中に含まれている養分です。光についても同じです。太陽はさまざまな波長の光をもっていますが、それらすべての波長が植物にとって必要とは限りません。例えば紫外線のように、大量に浴びると植物にとっても危険になる場合があります。温室のガラスなどは、すべての光を透過させている訳ではありません。電照菊栽培の光源も人工の光です。こうしたことからも、植物が生育するためには、太陽の光でなければならないということはありません。光、水、養分の他に、二酸化炭素も植物の生育には欠かせません。密閉されたハウス栽培では、植物の盛んな光合成作用によって二酸化炭素が不足する場合もでてきます。そのため、ハウス内でわざわざ灯油を燃やしたり、液化炭酸ガスなどで二酸化炭素を補給することもあります。
ロックウール
セラミック
従来からの、土の上で植物を育てる方法は土耕栽培と呼ばれ、土の代わりに、養液の中に浸した培地で育てる方法が、一般には水耕栽培と言われる養液栽培です。培地にはロックウール(上)、セラミック(下)などさまざまなものが使われます。(愛知県飛島村)

バラ サフィニア ベゴニア
温室の中は土耕栽培や養液栽培に係わらず、冬でも色とりどりの花が咲き、初夏のような暖かさです。バラ(愛知県飛島村)、サフィニア、ベゴニア(M式水耕研究所)といった花が年中美しい花をつけています。

同じ作物を作り続けることで起きる連作障害
コマツナ
春菊
ハウス栽培は、作物の成長を人工的に管理しようというものです。基本的に大抵の作物をハウスで栽培することは可能ですが、施設に投資する分、ハウスでは収益性の高いものが多く栽培されています。上はコマツナ(愛知県飛島村)、下は春菊(岐阜県海津町)
 同じ作物を何年も続けて栽培することを連作と呼んでいます。ところが、連作を続けていると、作物がうまく生育しなくなるばかりか、病気になって枯れてしまうことさえあります。原因の一つは土壌中の養分のバランスが崩れるためです。しかし、最も大きな原因は病原菌や病害虫によるものです。作物を収穫した後には畑に根、葉、茎などの作物残渣(ざんさ)が残ります。作物が何らかの病気に侵されていると、残渣の中に病原菌が残ります。このとき、別の作物に転換すれば、それらの病原菌は生き延びられなくなりますが、同じ作物を作り続けると、病原菌が土壌の中に蓄積していき、やがて植物の抵抗力に打ち勝って病気が蔓延するのです。
連作障害を防ぐには、毎年、違う種類の作物を植える輪作(りんさく)という方法がとられています。ところが、米は何百年も同じ水田で作り続けられているのに連作障害がありません。これは、水が張ってあるために酸欠状態となり、好気性の病原菌などが繁殖しにくくなるからです。
連作障害が問題となってきたのは、農業にも効率が求められるようになってからです。単位面積当たりの収穫量が多く、商品価値の高い作物であればあるほど収入は増えてきます。しかも毎年異なる作物を作るより、同じものを栽培した方が作業は効率的です。しかし、価値の高い作物の種類は限られてしまい、連作につながってしまうのです。とくにハウス栽培は設備に費用がかかる分、商品価値の高い作物を続けて作ろうとします。ハウス栽培は管理されている分、病気や連作障害が少ないように思われるかもしれませんが、むしろ連作障害にかかる危険性も高いのです。


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