フジクリーン工業株式会社
水の話 サケの遡上part1
いまだ謎の多いサケの生態

サケのすめる川とは

古里の川で最後の力をふり絞り遡上するサケの群れ。しかし、途中で力尽きたり、産卵を終えて命果てたサケの死骸も累累と横たわっています。
 サケがすんでいる川というと、一般には、大変きれいな川というイメージがあります。ところが、サケがその川を遡上する一番の条件は、「におい」です。かつて石狩川が公害によって黒く汚れたときも、サケは遡上していました。また、稚魚も、かなり汚れた水であってもエサさえあれば川を下ることができるとされています。
 いま、日本のサケはほとんどがふ化放流事業によって川へ戻ってくるものばかりです。つまり、回帰させることを目的として放流しているわけで、サケが戻ってきたからといって川がきれいになった証拠にはならないのです。
 ただ、自然の状態のサケは、川底が砂利で湧水のある場所に産卵します。水温も10度C前後を好みます。こうした条件の川は、もともと自然度の高い川であり、水もきれいです。そうした川を取り戻すことが大切です。

淡水にも海水にも適応できる理由
 魚は大きく淡水の魚と海水の魚とに分離され、サケは一般には淡水の魚に分類されます。ところで、淡水の魚を海水の中へ、逆に海水の魚を淡水の中へ入れると普通は生きられません。理由はいわゆる浸透圧によるものです。
 動物の体をつくっている細胞は、海水よりも薄い塩分の液体で満たされています。海の魚は、体液よりも濃い海水の中にすんでいるため、普通ならば浸透圧によって体内の水分がうばわれてしまいます。そこで海水をどんどん飲んでエラにある塩類排出細胞から塩分だけを排出し体液とのバランスを保ちます。淡水の魚は、体液よりもまわりの水の塩分の方が薄いため、細胞内に水がどんどん入り込み、細胞が破壊されるので、水はなるべく飲まず、浸透圧によって体内へ入り込む水を尿として多量に排出します。サケの仲間は、この浸透圧調節機能があるためです。

積算温度480℃でふ化
 サケはアキアジとも呼ばれるように、一般には秋に遡上します。しかし早い川では7月の末頃から、遅い川では2月初め頃までが遡上の期間です。川によって遡上時期に差があるのは、水温との関係です。一般に地下水温の低い地方では早く、高い地方では遅いといわれています。というのも、サケが産卵する場所は、水温が安定している湧水のある場所です。そして産卵からふ化するまでの積算温度は480℃とされています。積算温度とは1日の平均温度を合計したものです。たとえば平均温度が10℃ならば48日、8℃ならば60日、6℃ならば80日、という具合です。つまり、水温が低ければ産卵からふ化までに時間がかかるため、早く産卵しなければならないというわけです。また、産卵場所が河口から遠く離れた場所の場合も、それだけ早く遡上しなければなりません。河口に集まって遡上の準備をしているサケも、産卵場所が遠い場合は卵が熟す前から遡上をはじめ、河口近くに産卵場所がある場合は、卵の熟す時期と遡上をはじめる時期が、ほぼ同じとなるのです。産卵の時期と場所との関係が、サケには十分わかっているようなのです。


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